9月にアルゼンチンのブエノスアイレスで行われた20年夏季五輪招致の最終プレゼンテーションに1番手で登場。「自分自身を救ってくれたスポーツの力、復興への思いを込めた」。右膝下を失った過去や、東日本大震災で家族が被災した体験を交えたスピーチでIOC委員の心をつかみ、招致成功の立役者となった。
帰国後は「時の人」となり、テレビ出演や各種イベントの出演依頼が殺到。勤務するサントリーの社長賞やファッション関連の表彰も受けたが、スポーツ関連の受賞は意外にも今回が初めてだ。佐藤は「アスリートなのでやっぱりスポーツ賞が一番うれしいし、落ち着きます」と笑った。
今年は競技の面でも飛躍した。走り幅跳びで4月に5メートル02の自己最高記録をマーク。7月の世界選手権では同種目の銅メダルに輝いた。「来年も、1センチでも2センチでも多く跳びたい」と記録更新に意欲。来年2月にはオーストラリアでトレーニング合宿を行う計画だ。
さらに、来年3月7日に開幕するソチ・パラリンピックの聖火リレーに参加することも決まった。「将来はパラリンピアンから大賞者が出るように、一歩一歩頑張っていきたい」。表現豊かな名スピーチから広がった無限の可能性を生かし、世界に真海スマイルを振りまく。
◆佐藤真海(さとう・まみ) 1982年3月12日、宮城・気仙沼市生まれ。31歳。中学1年から陸上を始め、仙台育英高を経て2000年に早大商学部入学。チアリーダーとして活動していた01年に骨肉腫となり、右膝から下を切断。治療とリハビリを兼ねてスポーツを再開し、04年アテネから3大会連続で走り幅跳び代表でパラリンピックに出場。今年7月の世界選手権で銅メダルを獲得。