今年のスポーツ界の主役が集まった表彰式前、勝利の「3か条」に耳を傾けた。声の主は横綱・双葉山の69連勝に迫る63連勝を記録した白鵬だった。石川が優勝した際、電話が来るなど親交のある両者だが再会は約1年ぶり。「いい体になったね」。白鵬が握手を求めると「九州場所の千秋楽で優勝した場面はテレビで見ました。本当に強いなって思いました」と石川も呼応。勝負師同士の会話は一気に熱を帯びた。
「優勝とか、大事な一番の瞬間は緊張しましたか」。これまでツアー9勝を挙げている石川でも不安が頭によぎる時がある。その思いを読み取った白鵬が、助言を口にし始めた。
《1》流れを逃すな「自分の流れに乗ったら絶対に離してはいけない。ゴルフなら4日間、相撲は15日間集中する。僕は流れを大切にしている」
《2》型を持て「歴代の横綱はみんな自分の型を持っている。少しの差で相手の型にさせない。自信を持たないと」
《3》敵は自分「九州場所では残念ながら連勝は63で止まった。でも、そこから腐らず優勝まで持ち込めた。負けは、いろいろなことを教えてくれる。自分といかに戦うか。敵は自分だと思った」
石川は常に4日間の流れを大切にし、現在は新しいスイングの完成を目指し、そしてライバルを作らず自分のゴルフだけを重視している。「競技の違いはあるけど例えば15日間流れを持続するのはすごい。たくさん話せていい時間でした」。今後に向けて頼もしい“3か条”となった。
その上で「僕はまだ横綱ではないことは確か。ジャンボさん(尾崎将司)は横綱」と敬意を表しながらも「ひょっとしたら今は不在かもしれない」と、群雄割拠の男子ゴルフ界を頭に浮かべた。「だれもが横綱を目指している。もちろん僕も。プロになって3年間を振り返ると横綱を目指さなきゃおかしい位置にいる。すぐは無理だけど、数年後にファンのみなさまから『日本ゴルフ界の横綱は石川遼だ』と言ってもらえるように頑張りたい」。白鵬の教えを胸に、鋭い目で綱取りを宣言した。
壇上では来年の目標を聞かれ「3年連続報知プロスポーツ大賞」と、ボードに書き込んだ。「そのためにはまず1勝。日本シリーズでも優勝して選ばれたい」。賞金王奪回とマスターズでの活躍を狙う19歳の向上心は尽きない。「実りある1年にしたい」。品格、力量抜群の“横綱”になって、この場所に戻ってくる。(斎藤成俊)
◆来季へ新兵器止まるボール
石川に米国で活躍するための“新兵器”が登場した。この日、ボール使用契約を結ぶSRIスポーツが「NEW スリクソン Z―STARシリーズ」を、来年2月19日に新発売することを発表した。
石川が既に試している「Z―STAR XV」は、これまでに比べて飛距離のアップとスピン性能、軟らかさが売りとなっている。「以前もよかったのですがスピン量が違う。例えばロブショットのときに高く打って転がってしまうこともあったけど今回はスピン量が減らないので止まる」と、絶賛。2、3月から4月のマスターズに向けては米国への参戦が続く。「(グリーンが速い)海外では高い球が必要となってくる」と話しているだけに3度目の挑戦で初の予選突破を目指すマスターズ対策へ心強い味方となりそうだ。
◆石川遼(いしかわ・りょう) 1991年9月17日、埼玉・松伏町生まれ。19歳。小学1年からゴルフを始め、松伏小、松伏第二中を経て東京・杉並学院高を卒業。プロツアー初出場だった07年5月のマンシングウェアKSBカップで15歳8か月3日の世界最年少優勝を達成。08年1月にプロ転向し、同年は1勝し賞金ランク5位。09年はマスターズで日本人最年少出場。日本ツアーでは4勝を挙げ世界最年少賞金王に輝いた。今季は3勝で賞金ランク3位。ツアー通算9勝。174センチ、68キロ。家族は両親と妹、弟。