世紀の一戦で勝利を収めた将は、ハワイでバカンスを楽しんでいる。「今思えば、大変に盛り上がったシリーズだったですね」とV戦士と疲れをいやしながら、ON対決を回想。「20世紀を締めくくる最後の試合が評価されたことを、うれしく思う」と話した。
シリーズ終了後のインタビューでは「もう、ON対決はご遠慮願いたい」とコメントする一幕もあった。しかし「もし、またそう(日本シリーズに)なれば、やりますよ。ただ、やりにくいだけ。身内ですから」と王監督を気遣った。
現役時代、そして監督となっても、日本のプロ野球界を引っ張ってきた2大ヒーロー。まさしく功労者にふさわしい受賞となった。「また21世紀もON対決で始められればいいですね。エヘヘヘ」と得意のミスター・スマイルで話した。
◆王監督「21世紀へのスタート」
「ON時代」は世紀を超えて生き続ける。長年苦楽をともにし、今年はついに宿命の対決まで実現。ミスターと並び特別功労賞を受賞した王監督は「20世紀最後の年は、21世紀へのスタートでもある。今年は我々の対決という話題であれだけ世間が盛り上がったんだし、ONも頑張らないといけないな」と、喜びよりも使命感をにじませた。
早実高から巨人に入団した王は、当時からスターの道を歩んでいた長嶋の背中にあこがれ、追いつき、追い越そうと努力を重ねて868本塁打の金字塔を打ち立てた。今年の日本シリーズでも「いまさらあの人の栄光に傷がつくことはないんだから」と、がむしゃらに勝利にこだわった。19歳の少年が今年、還暦を迎えるまで輝きを失わなかったのも、ONという名の強いきずながあったからこそだ。
時代が進むにつれて、価値観も多様化する。王監督も「サッカーにも大きな(人気の)波があったように、プロ野球も決して安泰じゃないと思う」と、新たな世紀へ危機感を募らせている。だから、偉大なる両雄は未来へ向けて自らの歩みを止めることはない。
「あまり格好をつけて言いたくはないけど、オレは野球しか知らないし、野球一筋で生きてきた。ただ一生懸命に、必死で戦ってきた」と振り返った今世紀はまもなく終わるが、これもあくまで出発地点。王監督は「世界の王」から、3連覇と日本一奪回に挑む「名将」として、自身の生き方を貫き続ける決意でいる。