五輪史上女子初の4連覇を達成した伊調が、特別賞に輝いた。リオ五輪決勝では残り3秒から執念の逆転劇を見せた。スタンドで見守った姉・千春さんに駆け寄り、2年前に他界した母・トシさんの遺影を抱きしめ涙を流す姿は日本中の感動を呼んだ。「この度は特別賞を頂けることになり、大変うれしいです。この賞に恥じぬよう今後も努力していきたいと思います」とコメントを寄せた。
「求道者」という言葉がピタリとはまるアスリートだ。正式種目になった2004年アテネ五輪で金メダルを獲得して以降、吉田沙保里(34)と女子レスリングを日本のお家芸に押し上げた。勝ち負け以上に、理想のレスリングを極めることを目標に取り組んできた。伊調にとって、レスリングとは人生そのもの。「私自身を作ってくれたもの。レスリングがなければ、ここまで人生を懸けて臨むことができなかった」と振り返る。
9月に国民栄誉賞を授与されることが決まり、10月の表彰式では安倍晋三首相(62)から「5連覇を期待しています」と“V5指令”を受けた。首、肩などの故障もあり、今後については焦らずに答えを出す意向。式典後の会見では「東京五輪には関わりを持っていきたい。(選手は)可能性の一つとしてあるし、やるからには覚悟がいる。だけど、やり残したことはたくさんある」と含みを持たせていた。
将来的には指導者になり、子供にレスリングの楽しさを伝えたいという夢もある。「レスリングをマイナースポーツからメジャースポーツに変えていかなければと思う」とも口にする絶対女王。どんな形になろうとも、今後も愛するレスリングに携わっていく。
◆伊調馨(いちょう・かおり) 1984年6月13日、青森県生まれ。32歳。中京女大(現・至学館大)出身。姉・千春さんの影響で3歳からレスリングを始める。2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン、16年リオで五輪全競技を通じて女子史上初の4連覇を達成。世界選手権10度優勝。03年3月から16年1月まで個人、団体を合わせ189連勝(不戦敗を除く)。身長166センチ。