2年10か月続いた白鵬の一人横綱時代に終止符を打った新横綱は、九州場所のまっ最中。11日目のこの日は琴奨菊に敗れて厳しい表情だったが、支度部屋で受賞を知らされると「選ばれたの? 頑張らなくちゃね」と口もとを緩めた。
半年間で変身した。昨年は5場所中3場所で8勝止まりで、今年夏も8勝がやっと。一人横綱だった白鵬や、琴奨菊、稀勢の里の日本人大関誕生の陰に隠れ、存在感を発揮できなかった。
ところが、名古屋の全勝優勝から大躍進。3度目の綱取りに挑んだ秋も全勝Vで「運命によってなるもの」と語っていた角界の頂点に上り詰めた。古傷の左足首や右手首の痛みが癒え、持ち味の「速攻相撲」が取れた。5月22日の次女・ヒシゲジャルガルちゃんの誕生も励みにした。
社会奉仕にも積極的。医師と協力して心臓病の子供を救うボランティアや、母国モンゴルへ救急車を贈る活動に取り組む。今年からは日本の歴史本を自らの監修でモンゴル語に翻訳し、母国で出版する教育面の援助も始めた。信条の「全身全霊」の精神で土俵に立ち、横綱として相撲界の主役を張る。
◆日馬富士公平(はるまふじ・こうへい) 本名・ダワーニャム・ビャンバドルジ。1984年4月14日、モンゴル・ゴビアルタイ県生まれ。28歳。伊勢ケ浜部屋。00年9月に来日。01年初、初土俵。04年春、新十両。同年九州、新入幕。06年夏、新三役。09年初、大関昇進。優勝は09年夏、11年名古屋、12年名古屋、秋の4回。12年秋場所後に第70代横綱昇進。186センチ、133キロ。得意は突っ張り、右四つ、寄り。家族は妻・バトトールさんと2女。