今年のスポーツ界の“主役”がズラリと顔をそろえる中、表彰式前にうれしい対面があった。3月にWBCを制覇し、巨人をセ・リーグ3連覇、そして7年ぶりの日本一に導いた原監督。「お~、遼くん!」と大輪のような笑顔で迎えられた。
遼「初めまして。石川遼です」
原「一年間よく頑張ったね。陰ながら応援していました」
遼「ぼくも陰ながら応援していました」
巨人ファンの石川は恐縮しながら返答した。初めて会話を交わしたが、実は石川はジュニアゴルファー時代、訪れたコースで原監督の姿を見かけたことがあった。テレビの中のヒーローを同世代の仲間たちは握手を求めて一目散に駆け寄ったが「ぼくは遠くから見ているだけでした」という。
あれから数年を経た2009年。石川は米ツアーデビューを果たし、マスターズを含む海外メジャー3試合に出場。あこがれのタイガー・ウッズら超一流選手とプレーし世界トップクラスの技術を目の当たりにし、大きな糧にしてきた。
一方の原監督はWBCを制しただけでなく、6日には国際野球連盟(IBAF)から世界最優秀監督に選出されるなど、文字通り「世界一」の座にたどり着いた。それだけに「どこでも自然体でおられる方。テレビで見る印象とまったく同じでした。しっかりとご自分を持っていらっしゃる方でした」と“オーラ”を感じずにはいられなかった。
◆“プロゴルファー級”の腕前を持つ指揮官とはゴルフ談議に花が咲いた。
原「やっぱり、軟らかいボールだとドライバーの時、吹け上がるの?」
遼「そうですね。ぼくは硬いボールを使います」
原「昔、グレッグ・ノーマンもすごく硬いボールを使っていたんだ。遼くんはボールの契約はしていないんだよね?」
遼「はい。今は。最近はゴルフをされるんですか?」
原「オフにちょっとやったんだ。初めて“つかんだ”感じがするんだよ」
指揮官の“ハイレベル”な話に驚きを見せつつも、丁寧に答えた。壇上では「(1人の)ゴルフファンとしてドキドキしながら(活躍を)見ていました。ファンを魅了することがプロの原点。石川選手はスポーツファンを魅了するという点でも見事でした」と賛辞を受けた。固く握手を交わし「また一緒に頑張ろう!」とエールを送られた18歳。はるかなる世界一を目指し、2010年はさらなる飛躍の年にする。
◆石川遼(いしかわ・りょう) 1991年9月17日、埼玉・北葛飾郡松伏町生まれ。18歳。6歳でゴルフを始める。アマ時代の2007年5月、初出場したプロツアー、マンシングウェアKSBカップで史上最年少優勝(15歳8か月3日)を達成。173センチ、68キロ。家族は両親と妹、弟。
<原辰徳>(はら・たつのり)1958年7月22日、福岡県生まれ。51歳。東海大相模高、東海大を経て80年ドラフト1位で巨人入団。81年に新人王、83年は打点王とMVPを獲得。通算1697試合で打率2割7分9厘、382本塁打、1093打点。02年、監督就任1年目で日本一に導いた。03年に退任したが、06年に監督復帰し、07年からリーグ3連覇。今季はWBCで世界一、巨人で日本一。181センチ、86キロ。右投右打。