原監督の熱い視線を感じながら、坂本は声を張り上げた。「監督を前にして言いにくいんですが、今年はフルイニング出場を目標にしていたのに、開幕戦で情けない姿を見せてしまいました。来年こそはフルイニング出場して、チームに貢献したいと思います」とステージ上で宣言。同じ壇上にいた指揮官から「しっかり見ておきます」とゲキを飛ばされ、照れ笑いを浮かべた。
最高の1年となった今季だが、出だしだけはつまずいた。4月3日の広島との開幕戦(東京ドーム)。無安打で迎えた6回の第3打席、一ゴロに倒れた淡泊な打撃と、一塁まで走る姿が気迫を欠き、7回の守備から交代させられた。不動のレギュラーとして迎える来季は、同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。
すべてはあの快感をもう一度手に入れるためだ。リーグ優勝、日本一を達成した際のビールかけ。「この瞬間のためにみんなで1年間やってきたんだ、と思った。来年もやりたいと思います」と言葉に力を込めた。昨年はまだ19歳だっただけに、今年初めて醍醐(だいご)味を味わった。「想像以上にすごかったです」という銀座・日本一パレードでのファンの熱狂ぶりも、忘れることができない。これから何度でもあの瞬間を迎えるために、全力を尽くす覚悟だ。
同賞のトロフィーを手渡され「個人的にもチーム的にも目標を達成できた最高の1年でした。すごい悩んだ時は、監督や先輩方がすごいアドバイスを送ってくれました。周りの方の支えがなかったら、今の僕はない」と口元を引き締めた。周囲への感謝を忘れず、坂本は日本一連覇へ挑む。
◆坂本勇人(さかもと・はやと) 1988年12月14日、兵庫県生まれ。20歳。青森・光星学院から2006年の高校生ドラフト1巡目で入団。1年目の07年9月6日の中日戦(ナゴヤD)で、延長12回にプロ初安打となる決勝の中前2点打。通算成績は289試合で2割8分3厘、26本塁打、107打点。4年目の来季の年俸は8000万円。184センチ、78キロ。右投右打。独身。