自分だけでは、ここまでの投手になりえなかった。感謝の気持ちは自然と両親に向けられた。この日、巨人の選手による企画「母校へ帰ろう!」で栃木・大宮北小学校を訪問。子供たちに説いたのも、両親への思い。今季は強じんな肉体で、セ新人で44年ぶりの200投球回を達成。「球が速くなったのも、両親が大きく生んでくれたから。恥ずかしながら、僕は23歳になって、自分でお金を稼ぐようになって気付いた」と、小さな後輩たちに言葉を残した。
親からもらった肉体に、さらに磨きをかけている。ポイントは『背中』。日本ハム・ダルビッシュがトレーニングに励む都内のジムに通い、シーズン終了後に91キロだった体重は、94キロまでバルクアップした。背中は大きく隆起していた。「目標? 背中を見てください。20勝とか、口にするのではなく、背中です」。ダルビッシュも多くを語ることなく結果を残している。「一緒のジムに通わせてもらっているだけ」と濁したが、球界のエースの背中を見て感じ取ったことだ。
11年前、小学校の卒業文集に「ドラフト1位でプロ野球選手」と書いた夢は、かなえた。子供たちは、その背中を見て、また夢を抱く。「子供たちの記憶に残るような投手に。しっかり体を作って、また違った沢村拓一を表現できたら」。ルーキーとしての勲章は、1つのステップに過ぎない。
◆沢村拓一(さわむら・ひろかず) 1988年4月3日、栃木市生まれ。23歳。佐野日大高で3番手投手だったが、中大入学後、才能開花。10年ドラフト1位で巨人入団。29登板で11勝(11敗)、防御率2・03と174奪三振。184センチ、94キロ。右投右打。家族は両親と姉。