無心で駆け抜けた1年だった。「言い訳をしない。人のせいにしない。これだけは守ろうと思っていた」。横浜からFA移籍1年目。自身を厳しく追い込んだ。右太もも裏の肉離れもあったが、114試合出場で打率3割3分8厘、12本塁打、74打点。堂々の成績でパ・リーグ連覇、8年ぶり日本一の原動力となった。
「頑張れば報われる。そういうのがうれしいですね」。交流戦MVPを手始めに、プロ野球2人目となる両リーグ首位打者、ベストナイン、パ・リーグMVP…。また1つ、栄誉が加わった。「人間って、欲が出ますからね。来年も、この賞をいただければ…」と色気を出した。
4年契約の2年目となる来季までは年俸固定のため、この日は現状維持の年俸1億7000万円プラス出来高払いでサインした。ただ、昨オフに結んだ出来高契約により、今季の成績に対して9000万円の“ボーナス”が入ることも決まった。「打率10割が理想です。1球1球を無駄にしない選手でいたい」。球史の名を刻んだ安打製造機の目標は、どこまでも高い。
◆内川聖一(うちかわ・せいいち) 1982年8月4日、大分市生まれ。29歳。大分工高から00年ドラフト1位で横浜入団。08年に右打者史上最高の打率3割7分8厘で首位打者を獲得。昨年に国内FA権を行使し、ソフトバンク移籍。今季は首位打者に輝き、パ・リーグMVP。通算1015試合で打率3割1分6厘、91本塁打、429打点。家族は元フジテレビアナウンサーの翼夫人。184センチ、92キロ。右投右打。