三浦雄一郎さん、90歳でのエベレスト登頂へ挑戦続く「人類の年齢的な限界を超えてみたい」

アルゼンチンとチリの国境にある南米大陸最高峰のアコンカグア(6959メートル)への登頂に挑戦し、ドクターストップのため断念した冒険家の三浦雄一郎さん(86)が26日帰国し、都内で報告会を行った。
三浦さんは今月2日に日本を出発し、高度順応を挟みながら、2度のヘリコプター移動を経て5580メートル地点へ。そこから6000メートルまで約400メートル登ったものの、天候待機をしていた20日に、同行した医師の判断で無念の下山となった。
「ドクターストップを受けた時は、むしろ下(平地)よりも元気な気がして、『まだまだいける』という感じでした」と気力は充実していたという三浦さん。「(登頂の)チャンスをもらえないか」と15分ほど沈黙し、“無言の抗議”をしたそうだが、高血圧と不整脈、心臓肥大などがあり、心不全で突然死する可能性があるとの医師からの忠告を聞き、そこからはスパッと下山の方向に切り替えたという。
副隊長として同行した次男の豪太さん(49)は「以前、登頂を諦めることになった時も、ずっと頂上の方を見ていたような人。その三浦雄一郎を『無事に下ろす』という責任があった」という。三浦さんも、豪太さんの「一緒に下りよう」との言葉が断念決意の大きな後押しとなったと明かした。その後、豪太さんは三浦さんから「お前は頂上に行って来い」との言葉を受け、登頂に成功した。
今後は「人類の年齢的な限界を超えてみたい」と90歳でのエベレスト登頂を目指し、トレーニングに励む予定。「6000メートルまで元気いっぱいに行けたのは自信になった。次へのステップ、夢になりました」。まずは、90キロ近くあるという体重を食生活やスキーなどによる筋力トレーニングで10キロ減らすことを自らに課していく。
◆三浦雄一郎さんのアコンカグア挑戦から帰国まで
1月2日に日本を出国し、4日にアルゼンチン・メンドサに到着。5~9日は1890~3800メートルの間で高度順応を行う。その後、10日にヘリコプターでベースキャンプ(4200メートル)入りし、11~17日まで同所で高度順応トレーニング。18日に再度ヘリコプターに乗り、5580メートル地点へ移動して登山をスタートさせた。19日に6000メートル地点到着。天候待機をしていたが、20日にドクターストップで登頂断念。下山する。登頂に成功した豪太さんと22日に合流し、24日にアルゼンチンを出発。26日、帰国した。(すべて現地時間)
◆アコンカグア 南米大陸の最高峰で、標高は6959メートル。アンデス山脈にあり、山頂はチリ国境付近のアルゼンチン領に位置する。7大陸最高峰の中で、世界最高峰エベレストの8848メートルに次ぐ高さ。1897年にイギリスの登山隊のメンバーが初登頂。日本人としては1953年に早大の登山隊が初めて登頂した。
◆三浦 雄一郎(みうら・ゆういちろう)1932年10月12日、青森市生まれ。86歳。北大獣医学部出身。64年、スキーのスピードを競う「キロメーターランセ」で時速172・084キロの世界新(当時)を樹立。70年に世界最高峰エベレストのサウスコルからスキー滑降に成功し、ギネス認定。85年に世界7大陸最高峰の滑降に成功。13年5月、80歳でエベレスト登頂に成功。家族は妻と2男1女。