羽生善治竜王、史上7人目の2000局…最多は加藤一二三九段の2505局「はるか遠くのこと」

スポーツ報知
1986年1月31日、宮田利男六段(左)とのデビュー戦に勝利した15歳の羽生善治四段(右)。谷川浩司九段(中)が注目新人の様子を見に来ている(提供・日本将棋連盟、撮影・弦巻勝)

 羽生善治竜王(48)が21日、史上7人目の公式戦通算2000局を史上最年少の48歳1か月で達成した。東京都渋谷区の将棋会館で行われた第77期順位戦A級で阿久津主税八段(36)に先手番の79手で勝ち、通算1417勝目を挙げて節目を飾った。数々の記録を塗り替え続ける男は、数字が意味するものについて「目標、目指すものとしてはあります」と明言した。

 2000回目の勝負を終えた羽生は、対局室に報道陣が来ると少し驚いたような表情を浮かべた。「長くやってきた積み重ねとして、たくさん対局する機会に恵まれて良かったなと思います」。節目の感慨はない。「近くなっているのは大雑把に知っていましたけど、朝(対局前)も取材が入っていたので分かりました」。淡々と語る顔は、代わりのいない仕事を実直に続ける職人を思わせた。

 1986年1月31日、デビュー戦の第36期王将戦1次予選・宮田利男六段(現八段、66)に勝利した時は15歳の少年だった。数々の記録を打ち立て、現在も棋界最高位「竜王」に就いたまま、48歳で2000局に到達した。「毎年かなりの対局をやってきたんだなあ、とは思います。たぶん10代、20代の頃の局数が多いのでトータルとして多くなったのかなと思います」

 2000局棋士7人の中で最年少の48歳1か月での達成。四段昇段後、32年11か月での到達も最速だった。過去の最年少、最速は谷川浩司九段(56)の52歳4か月、37年8か月。若き日、目標としていた先人の記録を大幅に塗り替えた。

 特筆すべきは通算勝率だ。1417勝581敗2持将棋(21日現在)で7割9厘。故・大山康晴十五世名人の6割6分4厘を超えた。有望株がデビュー後に7~8割勝つことは珍しくないが、タイトル戦を連戦しシード枠や在籍クラスによって上位との対戦ばかりになると通算勝率は6割前後まで落ちていくのが普通。ところが羽生は大台を維持したままだ。「勝率を維持することは大変なことだとは思っていますけど、数字を残せたことは良かったと思います」。大変、という単語を発する口調には実感がこもっていた。

 現在進行中の第31期竜王戦で防衛をすると、前人未到のタイトル獲得通算100期の大台に達する。通算勝利も大山十五世名人の史上最多記録を塗り替える1434勝まで残り17勝と迫っている。今まで数字へのこだわりを語ることはほとんどなかったが、目前に迫っていることもあるのか「目標というか、目指すべきものとしてはあります」と明確に語った。

 思わず笑顔を見せたのは、ひふみんの話題になった時。通算対局の史上最多記録は加藤一二三九段(78)の2505局。近年、年度で50局前後を指している羽生でも、単純計算であと10年を要することになるが「加藤先生の記録はまだまだはるか遠くのことなので、自分なりに一歩一歩、前進していけたらいいなと思います」と述べた後で「…2500までいくのはかなり大変なような気がしますね」と楽しそうに笑った。(北野 新太)

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