紀平梨花、ザギトワ超え ノーミス世界最高得点で首位

◆フィギュアスケート グランプリ(GP)ファイナル第1日(6日・カナダ・バンクーバー)
【6日=高木恵】女子ショートプログラム(SP)で、GPデビュー戦から2連勝の紀平梨花(16)=関大KFSC=がルール改正後の世界最高得点となる82・51点をマーク。平昌五輪金メダルのアリーナ・ザギトワ(16)=ロシア=に4・58点差をつけて首位に立った。3回転半ジャンプ(トリプルアクセル)を今季SPで初成功させ、自己ベストを11・72点も更新。日本勢では2005年大会の浅田真央以来となるGPデビューシーズンのファイナル優勝が見えた。
会場に張りつめていた緊迫感が、この日一番の興奮に変わった。総立ちの観客を眺めながら、紀平は小さくガッツポーズ。82・51点が表示されると口元に手をやって目を見開き、すぐに笑顔で手を振った。ルール改正後の世界最高得点。「点数を見た時はすごくビックリした。想像もしていないような点数だった」。自己ベストを11・72点更新し首位に立った16歳は、表情豊かに喜びをかみしめた。
踏み切りに向かう軌道のカーブを大きく。弱気にならずにスピードに乗ったまま。2つのチェックポイントを強く意識しながら、迷いなく高く体を浮かせた。冒頭のトリプルアクセルは空中で回りきり、流れるように着氷。今季SPで初めての成功に「やっとできたな、っていう気持ち」。出来栄え点(GOE)2・51点を引き出す完璧なジャンプだった。
送り出される時、浜田美栄コーチにかけられた言葉が自信になった。「トリプルアクセルだけじゃない。他もうまくなっているよ」。曲を解釈した滑り、フリーレッグの所作。ジャンプに注目が集まる中で、細かい動きを洗練させてきた。芸術面を評価する演技構成点でも8点台後半をそろえた。スピンでレベル2の評価がありながらの高得点。浜田コーチは「83~84点は行く」と、さらなる伸びしろを指摘した。
前戦のフランス杯では時差ボケに苦しみ、足に力が入らずSP、フリーともにトリプルアクセルを決められなかった。今回は時差対策に昼寝を取り入れた。試合開始6時間前の午後3時から1時間半、心身を休めて「体が全然違った」。「月の光」のスタートとフィニッシュは、枕に見立てた両手に頬を付き眠りに就くポーズ。夢の中で踊る少女がテーマの演目だ。日々の練習からイメージしているという「夢の中でノーミスしている自分」をやり遂げた。
日に日に高まる周囲の期待を苦に思ったことはない。「去年できなかったことを、今年は絶対やりたいという思いだけ。プレッシャーというのは感じていない」。ザギトワを抑えての首位発進にも舞い上がることはない。「フリーが終わっていたらすごくうれしいと思うけど、まだフリーがあるので全然気が抜けない。ショートで決められたので、フリーは自信を持って挑めると思う」。フリーではトリプルアクセルを2本投入予定。完璧に決めた先に、日本勢では浅田真央以来となるGPデビューシーズンのファイナル優勝が待っている。