稀勢の里、初場所へ急ピッチ 三段目力士と20番「明日あたり高安とやっていけたら」

11月の大相撲九州場所を途中休場し、進退問題が再燃している横綱・稀勢の里(32)=田子ノ浦=が26日、東京・江戸川区の田子ノ浦部屋で約1か月半ぶりに相撲を取る稽古を再開した。非公開の朝稽古で相手は三段目力士。初場所(来年1月13日初日・両国国技館)出場に意欲を示しており、27日にも弟弟子の大関・高安(28)と三番稽古も始める。年明けには大関・栃ノ心(31)=春日野=が出稽古に来る可能性も浮上。右膝負傷による冬巡業全休で調整遅れが心配される中、両大関と胸を合わせて相撲勘を取り戻す。
相撲人生の土俵際に追いつめられた稀勢の里が、初場所出場の宣言通りに調整ペースを上げてきた。この日の朝稽古も非公開で行われたが、師匠・田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)によると、三段目力士と20番近く相撲を取った。右膝負傷の治療を優先させるために22日までの冬巡業を全休。3日からは部屋で四股など患部の状態を見ながら基本運動はこなしてきたが、“実戦”は途中休場した九州場所の4日目以来、約1か月半ぶりだった。右膝も問題なく「いい稽古だった。良かった」と視線を上げた。
朝稽古後は両国国技館で赤ちゃん抱っこイベントにも参加。写真撮影用のイスから立ち上がると、泣きじゃくる幼児と母親に歩み寄り、優しく抱き寄せる場面もあった。思った以上に土俵での手応えがあったからか「(赤ちゃんは)かわいかった」と笑顔ものぞいた。
巡業全休による調整遅れにもかかわらず、25日の番付発表会見では「あと3週間、いい状態に仕上げて初日を目指したい」と、あえて退路を断った。進退の不安を拭い去るかのようにこの日相撲を取った。復活へ一歩進んだことで「明日(27日)あたり高安とやっていけたら」と、さらに調整ギアを上げると明言した。
初場所へ背中を押してくれる大関がもう一人。同じくイベントに参加していた栃ノ心が「年明けかな」と田子ノ浦部屋への出稽古プランを明かした。九州場所後の横綱審議委員会では初の「激励」が決議された。厳しく受け止めた稀勢の里は会見で「(初場所で)いい成績を残すことが大事」と悲壮な決意を打ち明けていた。年末年始の“両大関戦”で失いかけた自信を取り戻す。(小沼 春彦)