錦織撃破の裏にあったティエムの大胆な決断

スポーツ報知

◆日東電工ATPファイナル第5日(15日・ロンドンO2アリーナ)▽1次リーグB組D・ティエム2(6―1、6―4)0錦織圭

 世界ランク8位のドミニク・ティエム(25)=オーストリア=は同9位の錦織圭(28)=日清食品=を相手にマッチポイントでサービスエースを決めると、ラケットを指さしキスして感謝を表現した。そのラケットにこそ、勝因が隠れていた。

 「何かを変えないといけないと思った。大会前まで感覚は悪くなかったし、練習も良かった。何も悪くなかったのに、フェデラーとの試合(13日)でコートにボールが入らなくて、信じられないような、僕のようなレベルの選手ではありえないミスがいくつもあった。自分とコーチの意見で、ストリングを変えることにした」

 今大会はボールが重く、跳ね、飛ぶ上にコートは速めで適応に苦慮する選手が続出している。通常、ティエムのガットはポリエステルとナチュラルの組み合わせ。それを縦横ともにポリエステルに変えた上、地元オーストリアの報道によると60ポンドの高いテンションで張ったという。打感は硬くなってボールが飛びにくくなる分、大きなスイングが特長のフォームから繰り出すパワーをより生かすセッティング。繊細な感覚を持ち40ポンドを下回る程度の緩さで張る錦織には考えられない、大胆な変更だ。13日の練習から変え、補欠で待機している同11位のカレン・ハチャノフ(ロシア)との実戦形式で「うまくいった」と手応えがあった。

 「何か新しいことを試すのは初めてじゃないけれど、1年の途中で何かを試すのはとても難しい。でも負けても失うものは多くなかった。もっと自由にプレーできるようにと思ってやってみた」

 すでに2連敗で、勝っても1次リーグ突破の望みは薄い。それなら変えてみよう、という開き直りにも似た大胆な決断が奏功した。プレースタイルを考えると、決定打14本(フォア7、バック4、サーブ3)、アンフォーストエラー21(フォア6、バック13、サーブ2)は効果バツグンと言い切れないスタッツではあるが、1勝をもぎ取るには十分だった。

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