大坂なおみ“謝罪”スピーチに元女王が気づかい

◆テニス 全米オープン第13日 ▽女子シングルス決勝 大坂なおみ2―0セリーナ・ウィリアムズ(8日、米ニューヨーク)
【ニューヨーク8日=大和田佳世】大坂なおみ(20)=日清食品=が、日本勢初の4大大会シングルス優勝の偉業を達成した。憧れの元世界女王セリーナ・ウィリアムズ(36)=米国=をストレートで撃破。大一番にも動じず、パワー負けしないショットと丁寧なプレーで、いら立ち自滅していく相手や観客の大ブーイングに集中を乱されることなく最後まで戦い切った。アジア勢初の全米制覇で賞金380万ドル(約4億2180万円)を獲得し、世界ランクも自己最高の7位に上がることが決まった。
新女王・大坂の優勝インタビューは意外な言葉から始まった。「みんなセリーナを応援していたのは分かっている。こんな結果になってごめんなさい」
試合中は封印していたが、コートを一歩出ると、憧れの存在への思いがあふれた。「彼女と(試合終了時に)ハグをしたら自分が子供に戻ったように感じた」。悲しさ、喜び…会見でも理由を問われ涙するほど複雑な感情。寄り添うセリーナにおじぎをして「対戦してくれてありがとう」と正直な気持ちを伝えた。
表彰式が始まってもブーイングはやまず。スピーチに備えタオルをかぶってバナナを食べながら準備したメモを読み返したが、全部吹っ飛んだ。トロフィーを落としそうになりながら掲げても笑顔は戻らなかった。
そんな会場に呼びかけたのは、セリーナだった。「ブーイングはやめて彼女を祝福して」。大坂には「勝者にふさわしい選手。その幸せを感じて」と声をかけた。17歳で初優勝した99年を振り返り「彼女の涙が幸せなのか悲しみか分からないけれど、私の初優勝時とは違う。そんな感情を味わってほしくない」と気遣い、その理由を昨年9月に第1子を出産したママらしく「母性からだったかもしれない」と語った。
全米決勝で歴代2位となる16歳20日差対決。異例の展開となった一戦は決着後ともに涙しながら、母目線、子供目線で互いを気遣う不思議な関係が生まれていた。