【二宮寿朗の週刊文蹴】チケット不正転売対策で大切にすべきこと

高額転売を防げ―。チケット不正転売禁止法が昨年12月に成立し、今年6月から施行される。
先日、広島カープの“プラチナチケット騒動”がニュースとなった。抽選券の配布に5万人以上のファンが並び、警察も出動する事態になったとか。
約4万枚の抽選券に対して当選者は2100人で競争率はおよそ20倍。大量購入に及ぶ当選者は身分証の提示と転売をしない旨の誓約書が義務づけられるという。配布から2日後に当選発表としたのも抽選券の転売を防ぐため。球団の苦慮もうかがえる。
Jリーグでも不正転売が問題化している。王者・川崎フロンターレのシーズンチケット(リーグ戦17試合、ACLグループリーグ3試合)は早々に完売。公式サイト上にて「正規の販売方法以外で購入されたチケットであることが判明した場合にはこれを無効とし、ご入場をお断りいたします」と注意を促している。開幕戦に続いて1日の鹿島アントラーズ戦も全席種完売が発表されており、フロンターレ人気は一層の高まりを見せている。
チェック態勢の強化を掲げるなど転売防止に力を入れる川崎は来季から電子チケットを導入予定だ。シーズンチケット購入権を得られる後援会の会員証をIC化するプランなどそのトライアルに向けた準備を進めている。
ただ不正転売にニラミを利かせると同時に、大切にしなければならないのはアフターサービスとチケットが手に入らないファンへの救済策だろう。シーズンチケットの場合、用事で行けない試合が出てくることもある。クラブは該当試合のチケットとグッズクーポンを引き換える「競技場リセールサービス」を、トライアルを経て今季から導入した。戻ったチケットは再版に回され、適正価格で空席を埋めることになる。不正転売を防ぐ取り組みとともにファンの声を聞き、ニーズに合わせていく姿勢が求められている。
(スポーツライター)