【岩本輝雄のDirecto】見えてきた最も効果的な攻撃の形…準決勝のキーマンはタメが作れる乾

◆アジア杯決勝トーナメント準々決勝 日本1―0ベトナム(24日、UAE・ドバイ・アルマクトゥームスタジアム)
日本代表がベトナムを下し、2大会ぶりの4強入りを決めた。攻守に運動量豊富な相手に苦しめられながらも後半12分の堂安律(20)=フローニンゲン=のPKによる1点を守り抜いた一戦について、元日本代表MF岩本輝雄さん(46)は「日本の最もいい攻撃の形が見えてきた」と評価。激戦必至の準決勝のキーマンに乾貴士(30)=ベティス=の名前を挙げた。(構成・中村 健吾)
後半、日本の攻めが良くなったのは、北川航也(22)=清水=、南野拓実(23)=ザルツブルク=、堂安の3人が相手の3バックに、くっつきに行くことで、選手たちの距離感が良くなったから。
前半は縦パスが入っても、個々が離れ過ぎていた。相手の3バックに対して3対1とか2の状況になって中々、ボールが前に運べなかった。縦に3対3の状況を作ることで、そこを打開した。ベンチの指示もあったろうし、選手たちで話し合ったのだろうが、ああなると、日本はいい球回しができて、チャンスが作れる。
なんと言っても柴崎岳(26)=ヘタフェ=の後ろからのゲームメークが素晴らしかった。もう一つ、前半の苦戦はベトナムの10番・グエン・コン・フォン(24)が良かったから。彼一人で行けてしまっていた部分があった。一番危険だったフォンもあれだけ動いていたから、後半疲れてしまった部分があっただろうし、前の試合で延長、PK戦まで行ったのも大きかったろう。後半、ガクンと動きが落ちた。
堂安は決して本調子ではない中、あそこでPKを奪うし、ポジショニング自体も良かった。20歳と若いのに自らPKを決めてしまうところもいい。0―0の局面で結構、緊張するシーンできっちり決めるところはさすがだ。前の選手なんで、点を取ってナンボだし、あのくらい積極的でないとダメ。僕自身も22歳の時、横浜フリューゲルス(当時)戦で自ら倒されたPKを蹴って外したのを思い出した。
内容的にもっとチャンスをつくって3―0とかで勝ってもらいたいところだが、結果として勝つことが何より大事。この厳しい連戦の中では一つ一つ勝つことこそが優勝につながる。
4試合ぶりの出場となった大迫勇也(28)=ブレーメン=は、もう少しプレーしたかっただろう。準決勝で先発するために様子見で出したのかなと言う気はする。
原口元気(27)=ハノーバー=も運動量が素晴らしく上下に動き回るが、次戦、先発で見たいのは乾貴士(30)=ベティス=だ。乾はサイドでポイントになり、時間が作れる。自分でも行けるし、味方も生かせる。
南野もポジショニングやボールをもらう時の動きはいい。5試合連続ゴールがないという、こういう時の方が準決勝、決勝でバーンと爆発したりするかもしれない。乾が入った方が南野もチャンスができ、コンビネーション的に決めそうな気もする。
中盤でゲームメークに加え、時間も作れる乾が入ると、その瞬間に南野が動き出す時間がもっとできる。ポジショニングがうまい南野だけに、いいボールも入ってくるだろう。柴崎のゲームメークで乾が時間を作りチャンスメークしたところで、クサビとなる大迫にボールを入れて、南野、堂安が入っていく。または乾から柴崎へ。さらに柴崎から縦パスが入ったところに誰かが行く。これこそが日本の攻撃で最もチャンスができる形だと思う。
準決勝の相手・イランは欧州のチームでやっている選手も多く、高さに加え、スピードもある。特に中国戦でもゴールを決めたセンターFWサルダル・アズモン(24)には要注意。イランは今までやってきた相手とは違う。一番手ごわいし、激しい試合になるだろう。
(題名のDirecto・ディレクト=スペイン語で「直接、まっすぐに」の意味)