アントニオ猪木氏、これからのプロレス界へ提言「常識を超えた人が生まれれば面白い」…村松友視さんと初の共著「猪木流『過激なプロレス』の生命力」を出版

元プロレスラーで参議院議員のアントニオ猪木氏(75)が親交の深い直木賞作家の村松友視さん(78)と初の共著「猪木流『過激なプロレス』の生命力」(河出書房新社・税込1728円)がこのほど、出版された。
同書は、1980年に「私、プロレスの味方です」で作家としてデビューした村松さんが昨年11月に35年ぶりにプロレスについて執筆した「アリと猪木のものがたり」(河出書房新社)の出版を受け、スポーツ報知のメディア局コンテンツ編集部の福留崇広記者が猪木氏と村松さんを個別にインタビュー。今年元日から「スポーツ報知」の電子版で8回に渡り「アントニオ猪木と村松友視が明かす『アリと猪木のものがたり』」を連載し、大きな反響を呼んだことを受け、さらに猪木氏と村松さんへのインタビューを重ね書籍化に至った。
伝説の一戦となった1976年6月26日のボクシング世界ヘビー級王者ムハマド・アリとの格闘技世界一決定戦を始め、タイガー・ジェット・シン、ストロング小林、アンドレ・ザ・ジャイアントなど今も語り継がれる生命力を持つ激闘、猪木氏の師匠、力道山、永遠のライバル、ジャイアント馬場への思いなど猪木氏と村松さんが語り尽くしている。
通常の対談とは違い、それぞれのインタビューでの言葉を重ね合わせたことで両者の思いがスイングする内容となっている。今回の出版にあたり「スポーツ報知」電子版では猪木氏に独占インタビューを敢行。これからのプロレス界を「猪木流」に展望してもらった。
今年は、1998年4月4日に東京ドームで引退してから20年目となった。昭和の黄金時代に「過激なプロレス」でファンの心をつかんだ猪木氏は今のプロレスをどう見ているのだろうか。
「非常に難しいですね。今はおちゃらけでそれがまかり通ってそれも認知されてしまった形みたいなところがありますけど、基本はレスリングは強くあれでしょ。強くなくてもいいっていうプロレスに変わったのがオレには分からない。昔はプロレス八百長論がいつもあって野球の賭博、相撲の八百長が報じられるたびにプロレスが引き合いに出されて、そうした世間と闘う意味でオレの中でプロレスの凄さをリングでぶつけてきたんです。それが力道山が戦後の廃墟から立ち上がったという力道山遺伝子をオレが継いじゃっている部分なんですね。分かりやすく言えばそこがジャイアント馬場とアントニオ猪木との違いで、馬場さんはパフォーマンスでもここで飯が食えるからいい商売だよなって言ってましたが、オレはそうじゃないだろうといつも闘ってきた。ただ、今となっては、その闘いはオレの時代でオレだけのものだったのかなと。後に続いた彼らがそれを感じてもらえたら最高だったんだけど…」
今のプロレス界は猪木氏が設立した新日本プロレスが独り勝ちの状態で興行収益も過去最高を更新する勢いで人気は回復している。これからのプロレス界はどんな方向性が考えられるのだろうか。
「力道山の時代にテレビが生まれて、テレビで時代が変わり、テレビがなかったらプロレスもまた変わっていたと思う。今は、それがネットの世界に変貌している。そのへんを使ってプロデュースして、スターづくりをする人が出てくれば、可能性はあるでしょう。ひとつはプロレスは娯楽として楽しめる、今はその要素がすごく強いんだろうと思う。前にオレも素人を使ったファッションショーに出たことがあるんですが、そういうような常識を超えた、違う視点からとらえていく人が生まれて行けば面白いんじゃないかな」
未来のプロレス界へ提言をした猪木氏。自身のこれからについて言及した。
「自分らしくっていうことですね。元気があれば何でもできると言ってきた人間が今回、手術をして、首から腰まで全部体験させられて、そのぐらい過激な闘いで体は本当に痛めていたんですね。昔は傷が勲章だって言っていたのが今はその勲章が一個ずつ錆びてきて大変な状況なんです。ただ、今は肉体ではなくオレの精神的なものを側面から見てくれるファンもけっこういるので、次の次の世代に送る何かをまとめて教えられればいいと思っています。基本がないのは自分だろうと思っているので、こうあるべきっていう形ではなくオレなりの行動でメッセージを伝えていきたい」