アントニオ猪木氏、33回目の訪朝で感じた北朝鮮の変化…村松友視さんと初の共著『猪木流「過激なプロレス」の生命力』出版

元プロレスラーで参議院議員のアントニオ猪木氏(75)が親交の深い直木賞作家の村松友視さん(78)と初の共著『猪木流「過激なプロレス」の生命力』(河出書房新社。税込み1728円)がこのほど、出版された。
同書は、1980年に『私、プロレスの味方です』で作家としてデビューした村松さんが昨年11月に35年ぶりにプロレスについて執筆した『アリと猪木のものがたり』(河出書房新社)の出版を受け、スポーツ報知のメディア局コンテンツ編集部の福留崇広記者が猪木氏と村松さんを個別にインタビュー。今年元日から「スポーツ報知」の電子版で8回に渡り「アントニオ猪木と村松友視が明かす『アリと猪木のものがたり』」を連載し、大きな反響を呼んだことを受け、さらに猪木氏と村松さんへのインタビューを重ね書籍化に至った。
伝説の一戦となった1976年6月26日のボクシング世界ヘビー級王者ムハマド・アリとの格闘技世界一決定戦を始め、タイガー・ジェット・シン、ストロング小林、アンドレ・ザ・ジャイアントなど今も語り継がれる生命力を持つ激闘、猪木氏の師匠、力道山、永遠のライバル、ジャイアント馬場への思いなど猪木氏と村松さんが語り尽くしている。通常の対談とは違い、それぞれのインタビューでの言葉を重ね合わせたことで両者の思いがスイングする内容となっている。今回の出版にあたり「スポーツ報知」電子版では猪木氏に独占インタビューを敢行。「猪木流」の生き様に迫った。
猪木氏は今年9月に建国70周年記念式典に招待され33回目の訪朝を果たした。1989年に初めて参院選に当選してから、師匠の力道山が北朝鮮出身だったということを知ってから「師匠への恩返し」を掲げ、94年に初めて訪朝を実現。95年4月には平壌で初のプロレス大会を実現するなど国交がない同国との交流を重ねてきた。今回の訪朝で猪木氏は北朝鮮の変化を感じたという。
「今、北朝鮮はすでに市場経済に変わっているんですね。その象徴として個人の資産で平壌に40階建てのビルが建ったんですね。こんなことは今まであの国では誰も考えたことはなかったんです。確かに貧しいことも事実かもしれないけど、変わっていく状況の中で、あの国に眠っている地下資源の発掘、あと前の議員時代から動いていたウラジオストクから平壌、ソウルを通ってプサンまで石油を送るパイプライン構想も水面下で進んでいます」
さらに世界からの観光客誘致へ開発も活発化しているという。
「観光も金剛山、マシンリョンというスキー場を整備しています。国際観光都市として開放されているウォンサンは海産物が豊富でさらに観光客を招聘しようとしています。その場合には当然、飛行機、空港が必要で現実に今、空港建設でアメリカの会社と折衝が進んでいます。この間、米国のポンペオ国務長官が訪朝しましたが、外交は話が裏でついてないと行かないんですね。行ってケンカするなら行かない。米朝関係が今、急速に動いて変化していることを感じます」
今年6月のシンガポールでのトランプ大統領と金正恩・朝鮮労働党委員長との初の米朝首脳会談から市場経済へ急速に舵を切っていることを肌で実感した。
「じゃぁ果たして日本政府がこの動きを捉えているかなと。鈍いというより知らない。もっと極端に言えば偏見なんですね。その偏見を取り除くのは本当に難しい。やっぱり思い込んだらそのイメージはずっと続くわけです。拉致問題がまさにそうです。解決するには会うしかないんですね。今までは制裁に制裁をかけてきましたが、なおかつ次に何をやるのか。今、圧力から対話と言ってますけど、そのラインってどこのラインでどうやっていくんだろうか?と思いますよ」
「オレは、政府と北朝鮮との交渉を邪魔しているわけじゃなくて、足を運んで向こう側の本当の話も聞いてきてます。これだけ、長い間の付き合いの中で、向こうの要人に“だったら日本はこういうことをしたいよ”と、だから“そちらがやるならこうした方がいいんじゃないんですか”とアドバイスもしてきたんですね。常に政治は水面下で動いてます。その部分で大事な事はいかに正確な情報なんですね。そういう意味では、オレにはルートがありますから、口はばったいようですが、オレのルートを使えよって言いたくなりますね」