【ソフトバンク】甲斐「びっくり」肩でMVP シリーズ新6連続刺した

スポーツ報知
優勝の瞬間、ベンチから飛び出す甲斐(上左)らナイン(カメラ・保井 秀則)

◆SMBC日本シリーズ2018第6戦 広島0―2ソフトバンク(3日・マツダスタジアム)

 SMBC日本シリーズ2018は3日、第6戦が行われ、ソフトバンクが2―0で広島を下して4連勝で対戦成績を4勝1敗1分けとし、2年連続9度目(前身の南海、ダイエーを含む)の日本一に輝いた。最高殊勲選手(MVP)には、日本シリーズ記録を更新する6連続で盗塁を阻止した甲斐が選ばれた。4回に西田のスクイズで決勝点を挙げ、先発のバンデンハークは6回無失点で10奪三振の快投だった。ホークス創設80周年のシーズンにリーグ2位からの下克上を果たし、工藤監督は就任4年目で3度の日本シリーズ制覇を達成した。

 “甲斐キャノン”が、その肩で最高の栄誉をつかみ取った。甲斐がこのシリーズで全く盗塁を許さず、6度すべてを刺してMVPに輝いた。「ちょっとびっくりです。僕とは思っていなかった。自分ひとりの力では取れなかった」。育成ドラフト出身では初の名誉。最も、打撃では14打数2安打の打率1割4分3厘で野手では最少安打、最低打率でのMVP。満面の笑みを浮かべながらも、戸惑うのは無理もなかった。

 初回1死一塁。一塁走者の田中がスタートを切ると、二塁へ矢のような球を送った。際どいタイミングで、判定は一度はセーフだったが、工藤監督がリクエストを要求し、覆ってアウトとなった。これで5連続で盗塁を阻止し、シリーズ新記録となった。

 2回2死一、三塁でも安部の二盗を自慢の強肩で防いだ。6盗塁阻止は、52年の巨人・広田に並ぶシリーズタイ記録となった。「バンデンは一生懸命クイックしてくれた。初回は西田さんがいいタッチをしてくれた。みんなの力です」。捕球から送球の二塁到達まで1秒9で一流と言われるが、甲斐は驚異の1秒7台。それでも、味方のサポートをひたすらたたえた。

 10年育成ドラフト6位からはい上がった苦労人。今季盗塁阻止率12球団断トツの4割4分7厘が示す通り、鉄砲肩と正確なスローイングが武器だ。身長は170センチだが、工藤監督は体の強さに太鼓判を押す。「体重は80キロ近くあるし、かなりの筋肉量。それであの動きはすごい」と感心する。ただ練習熱心なあまり、オーバートレーニングになることも。ウェートのしすぎでキレがなくなり、指揮官が“禁止令”を出すこともあった。

 筑後で自主トレ中だった1月のある日、雪が舞う中でも見学に訪れたファンのため、自ら室内に導き入れた。その場にいた全員がサプライズに大喜びだったが、そんなことをする選手は前代未聞。「寒すぎましたからね。当たり前ですよ」。素顔は、その体格から常人離れした太もものために、オシャレな私服を探すのも一苦労という25歳。

 向上心が衰えることはない。侍ジャパンの一員として、日米野球が控える。お目当ては、メジャーを代表する捕手のモリーナ(カージナルス)だ。「何かしら学んで帰りたい」と対戦を待ちわびている。

 達川ヘッドは「守備でMVPは初めてでしょう。歴史を変えた」と目を細めた。ただ、リードに課題があり、この日も最後は高谷がマスクをかぶった。「まだまだ力不足です」の言葉通り、2年連続で日本一に導いても課題は山積。真の正捕手を目指し、歩みを止めることはない。

◆甲斐 拓也(かい・たくや)1992年11月5日、大分市生まれ。25歳。楊志館高時代に内野手から捕手に転向し、10年の育成ドラフト6位でソフトバンクに入団。13年11月に支配下選手登録され、14年6月7日の広島戦(マツダ)でプロ初出場。昨年5月2日の西武戦(ヤフオクD)で、育成出身選手として史上初めて、満塁弾によるプロ1号を記録した。170センチ、80キロ。右投右打。年俸4000万円。独身。

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