東海大北海道・今川優馬、逆転指名だ 1か月前まで無名の大砲が一気に注目

プロ野球ドラフト会議は25日、東京都内で開かれる。札幌6大学リーグの東海大北海道・今川優馬外野手(4年)=東海大四高出=には中日、ソフトバンクの2球団から調査書が届いた。今秋リーグ戦の星槎道都大戦では、2打席連発を放つなど大学通算25本塁打を記録。今秋までスカウトリストにすら入っていなかった隠れた逸材。「シンデレラボーイ」になれるか。
どこにでもいる普通の大学生が、夢の世界へ挑もうとしている。自宅から自転車で大学へ通い、夜は焼き肉店で皿洗いのアルバイト。東海大北海道・今川は、今秋まで全く無名の存在だった。「プロから注目されていない。厳しいかも、と思っていた」。ところが今秋のリーグ戦で、運命の歯車が回り始めた。
9月25日の星槎道都大戦。プロ注目の148キロ左腕・福田俊(4年)を視察に来たスカウトの前で、2打席連続の左越え本塁打を放った。中日の米村明チーフアマスカウト(59)は「スイングスピードが速い。打ち方がええ」と大絶賛。中日の八木智哉スカウト(34)も「リストにすら入ってなかった」と、慌てて今川のもとへ視察に向かった。
今春にはリーグ史上最多の5本塁打を記録。優勝に貢献したが、全日本大学選手権は、下級生の不祥事で出場辞退となった。社会人チームの勧誘を蹴り、プロ入りへのアピールの場と考えていただけに、今川は「野球人生を懸けていたのに…」と頭の中が真っ白に。ただ、プロの夢を諦める訳にはいかなかった。
6人きょうだいの長男。父は単身赴任で、母・由美さん(45)の苦労は誰よりも知っている。「休んでいるところを見たことがない」と今川。試合があれば仕事を早めに切り上げ、応援にも駆けつけてくれる。「喜んでくれる姿が一番うれしい。プロに入って早く楽にさせてあげたい」と、その一心で練習に励んできた。
東海大四高時代は故障に泣かされて補欠だったが、大学から体づくりに励み60キロだったベンチプレスが今は140キロをマーク。スイングスピードも上がり、大学通算25本塁打と量産した。「志望届を出してから毎日、ドキドキで寝られない。不安だが、ワクワクの方が少し大きいかな」と今川。運命の糸に導かれた無名の大砲が、逆転指名を待つ。(清藤 駿太)
◆今川 優馬(いまがわ・ゆうま)1997年1月25日、札幌市生まれ。21歳。札幌南小3年から野球を始め、東海大四高時代は3年夏に背番号16で甲子園出場。大学では3年春からベンチ入りし、全日本大学選手権1回戦(対東洋大)で右中間へソロ本塁打を放った。大学通算25本塁打(公式戦通算12本)。遠投113メートル、50メートル走6秒0、ベンチプレス140キロ。176センチ、80キロ。右投右打。家族は両親と妹、弟4人。