【2023年】大関・霧島、「報知年間最優秀力士賞」師匠超え達成

報知年間最優秀力士賞に選出された霧島 報知年間最優秀力士賞に選出された霧島
 報知新聞社制定「令和5年(2023年)第66回報知年間最優秀力士賞」に大関・霧島(27)=陸奥=が26日、初選出された。都内で行われた選考委員会では、初の年間最多勝(62勝)や年間で最多タイの優勝2回をマークしたことなどが評価された。師匠の陸奥親方(元大関・霧島)も届かなかった栄冠を後押しに、初の綱取りがかかる来年初場所(1月14日初日、東京・両国国技館)に挑む。同場所初日には表彰が行われ、スポーツ報知杯、賞金が贈呈される。
◆親方のおかげ

 霧島は目を大きく開いて初受賞を喜んだ。「60年以上やっている賞を頂ける。うれしいですね」。過去の受賞者は千代の富士、貴乃花、白鵬ら名横綱が多く名を連ねていることを知ると、「えっ。すごいですね。ここに名前を残せてうれしい」と恐縮。昨年6月に両国へ移転した報知新聞社は陸奥部屋とは目と鼻の先。「国技館の隣にある建物ですか!」と見慣れた社屋からの“贈り物”に笑顔をみせた。

 初めて「霧島」の名が刻まれた。師匠の陸奥親方(元大関・霧島)は1991年に62勝で年間最多勝だったが、受賞したのは大関・小錦(現タレント・KONISHIKI)だった。霧島は大関に昇進した夏場所後にしこ名を受け継ぎ、“師匠超え”も決め「親方が育ててくれたおかげ」と感謝。同親方も「俺は取れなかったからなあ」と目尻を下げた。

 飛躍の1年だった。初場所は小結で11勝。関脇だった春場所は関脇・大栄翔(追手風)との優勝決定戦を制し初の賜杯を手にした。夏場所後には、大関昇進。九州場所では13勝を挙げて2度目の優勝。けがで名古屋場所を途中休場し、秋場所をカド番になりながら年間最多となる62勝。「昨年の今頃は想像できなかった。最高の1年でしたね」としみじみと振り返った。

 飛躍の陰には家族の存在があった。「娘が『頑張って』と言ってくれる。取組の後はパパ勝ったよと言ってくれるのが励みになるんです」とデレデレ。九州場所優勝後には初めて妻・ホランさんと長女・アヤゴーちゃんと支度部屋で喜びを分かち合った。「あと何度あっても良いですね」と優勝にも意欲的だ。

 初場所は初の綱取りとなる。入門時から最高位になる目標を掲げた夢の地位だ。横綱昇進の内規は「大関で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績」。横綱になれば、師匠の地位を超すことになるが、「いつも通り考えすぎないことが大事」。角界でトップ級の稽古量を誇る男は、初日まで鍛錬を重ねる。

 ◆霧島 鐵力(きりしま・てつお)本名ビャンブチュルン・ハグワスレン。1996年4月24日、モンゴル・ドルノドゥ県生まれ、27歳。陸奥部屋から2015年夏場所に初土俵。19年春場所で新十両。20年初場所で新入幕。23年夏場所後に大関昇進。優勝2回、技能賞3回、敢闘賞1回。得意は左四つ、寄り、投げ。186センチ、145キロ。

 ◆選考経過  選考委では初の年間最多勝、年間の優勝回数でも最多タイの2回を記録した霧島を軸に議論が進んだ。まず宮田委員が「群雄割拠の状況が続いている中での62勝というのは大きな価値がある」との声を上げた。

 刈屋委員は「戦国時代の終わりの雰囲気は出てきた年ではないか。その中で霧島の九州場所中盤からの気迫は素晴らしかったし、13勝での優勝は大きい」と評価した。能町委員も「今年は霧島の年だったとまでは言わないが、今後は霧島の時代になっていくのではないかという1年だった。13勝での優勝はものすごく評価できる」と続いた。

 依田委員は「大関に昇進した後、(停滞せずに)もう一度伸ばして九州場所で立派な優勝を果たした。場所の後半戦は別格感のある安定感だった」と、たたえた。一方で横綱・照ノ富士の休場が続く中、最多タイの優勝2回を記録した大関・貴景勝の奮闘を評価する場面もあった。

 山本委員も「(年間勝ち星数で迫った)大栄翔、豊昇龍、琴ノ若は年6場所全てで勝ち越しており優秀であるとは言えるが、最優秀というと霧島がふさわしいのでは」と同意。満場一致で霧島の初受賞が決まった。

 ◇選考委員 宮田亮平(金属工芸家、前文化庁長官、元東京芸術大学学長)、刈屋富士雄(立飛ホールディングス執行役員、元NHKアナウンサー・解説主幹)、能町みね子(文筆家)、依田裕彦(報知新聞社代表取締役社長)、山本理(報知新聞社執行役員編集局長)

◆霧島の成績

場所 成績
東小結 11勝4敗
東関脇◎12勝3敗
東関脇 11勝4敗
名古屋 西大関 6勝7敗2休
東大関 9勝6敗
九州 西大関◎13勝2敗

※◎は優勝。

◆年間成績

順位 力士名 所属 成績 勝率
1 霧島 陸奥 62勝26敗2休 .689
2 大栄翔 追手風 60勝30敗 .667
3 豊昇龍 立浪 59勝31敗 .656
4 琴ノ若 佐渡ヶ嶽 56勝34敗 .622
5 若元春 荒汐 54勝36敗 .600

※勝率の休場は負けで計算。

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