【2002年】朝青龍がモンゴル人初の受賞

「目指すは相撲界の頂点」とおどける朝青龍 「目指すは相撲界の頂点」とおどける朝青龍
 報知新聞社制定「平成14年(2002年)・第45回報知年間最優秀力士賞」が23日、大関・朝青龍(22)=高砂=に決まった。選考委員会が東京・丸の内のクラブ関東で開かれ、満場一致でモンゴル人初の受賞が決定。表彰式は来年1月12日、初場所(両国国技館)初日の土俵上で行われ、黄金の表彰状と賞金100万円、副賞のキヤノンカメラが贈られる。
◆最速タイの初優勝 さぁ綱取り

 横綱にさらに近づいた。角界最高峰の“MVP”を横綱以外の力士が受賞するのは、1992年の関脇・貴花田(現横綱・貴乃花)以来、10年ぶりのこと。初の綱取りとなる初場所番付発表の前日となったこの日、高砂部屋関係者によるボウリング大会に参加した朝青龍。受賞のしらせを受けると「横綱がもらう賞なんでしょ? 努力してきたことが認められてうれしいよ」と笑顔を爆発させた。

 名古屋場所後にモンゴル人として初めて大関に昇進。九州場所では貴花田と並んで史上最速タイとなる初土俵(前相撲)から所要24場所で初優勝。勢いに乗って初場所では史上最速の綱取りを目指す。だが、異国の地でのスピード出世には、荒々しさがついてまわった。

 秋場所11日目、貴乃花に敗れたときに花道で「チクショー」と叫び、九州場所10日目には霜鳥との一番で物言い取り直しの末に勝った後、支度部屋で「ちゃんと見ろよ」と審判批判が思わず口をついてしまった。

 横綱審議委員会は綱取りを前に、朝青龍の「品格」に対して物言いをつけ、師匠・高砂親方(元大関・朝潮)に異例の指導要請を行った。高砂親方は「まだまだ成長している過程。もともと日本人のような心を持っていたのだが、急激に強くなったことで悪いところが出てきた。気持ちをコントロールしきれない部分がある。年齢で言えば、私がまだ学生(近大4年)のころ。しっかり師匠として教えてやらないといけない」と師弟ともども身を引き締めて綱取りに臨む。

 本人はこの品格についてどう考えてるのか。「変に意識しすぎるとおかしくなってしまうから。自然にいくよ」差し出された色紙に勢いよくペンを走らせた。「品行方正」批判を逆手に取るかのように、書いてのけた。

 この天衣無縫なサービス精神が、誤解を受けることも多い。だが、休場続出、不入りと低迷傾向の角界を元気にしてくれる存在であることは間違いない。(酒井隆之)

 ◆朝青龍明徳(あさしょうりゅう・あきのり) 本名ドルゴルスレン・ダグワドルジ。1980年9月27日、モンゴル・ウランバートル市生まれ。22歳。高砂部屋。97年に来日し、高知・明徳義塾高に相撲留学。99年初場所、初土俵。2000年秋場所、新十両。01年初場所、新入幕。02年名古屋場所後に大関昇進。初土俵(前相撲)から所要22場所は史上最速記録。九州場所では最速タイの所要24場所で初優勝。殊勲賞3回、敢闘賞3回。得意は突き、押し、投げ。三兄は新日本プロレスのブルーウルフ。185センチ、137キロ。独身。

 ◆選考経過

 今回から平山郁夫委員(日本画家)の退任にともない、日本相撲協会元理事長で相談役の境川親方(64)=元横綱・佐田の山、スポーツ報知評論家=を新委員に迎えて、選考会が開かれた。

 選考資料では年間最多の66勝で休場なし、唯一年6場所すべてで勝ち越している朝青龍が圧倒的優位。伏見委員が「両横綱をはじめ休場者が多い1年だった。朝青龍が支えたのではないか」と言い、安西委員が「初場所をのぞいて年5場所で2ケタ勝利を挙げているのも朝青龍だけだ」と補足し、スピードの満場一致だ。

 青木委員が「来年初場所では綱取りがかかるが、品格が問われている」と問題提起し、議論は朝青龍の気性の荒さに対する是非論へ。

 「結構なこと。他のスポーツでも若い選手がテングになるのはよくあること。そうやって成長していく」(安西委員)、「相撲が神事であることを理解してほしいが、頂点を極めると、これまで以上に努力し、地位にふさわしい態度が備わるもの」(伏見委員)と期待色が強く、「かつての力士はみんなあのがむしゃらさがあった。今の日本人力士が優しすぎる。逆に日本人の闘志に火をつけてもらいたい」(境川委員)と今回、名前も挙がらなかった上位陣に奮起を促す結論となった。

 ◇選考委員 有馬朗人(参院議員)、安西邦夫(東京ガス会長)、境川尚(日本相撲協会相談役)、伏見勝(報知新聞社社長)、青木辰衛(報知新聞社編集局長)

◆朝青龍の成績

場所 成績
西関脇  8勝7敗(新関脇)
西関脇 11勝4敗(殊勲賞)
東関脇 11勝4敗(敢闘賞)
名古屋 東関脇 12勝3敗(殊勲賞)
東大関 10勝5敗(新大関)
九州 東大関 14勝1敗(初優勝)

※◎は優勝。

◆年間成績

順位 力士名 所属 成績 勝率
1 朝青龍 高砂 66勝24敗 .733
2 千代大海 九重 61勝23敗6休 .677
3 武蔵丸 武蔵川 54勝16敗20休 .600
4 若の里 鳴戸 51勝39敗 .566
5 土佐ノ海 伊勢ノ海 48勝42敗 .533

※休場は負けとして計算。

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