【1998年】日本一あったか横綱若乃花が初受賞

クマのぷーさんと似ているでしょ?ぬいぐるみを抱えて年間最優秀力士賞の受賞を喜ぶ横綱・若乃花 クマのぷーさんと似ているでしょ?ぬいぐるみを抱えて年間最優秀力士賞の受賞を喜ぶ横綱・若乃花
 報知新聞社制定の1998年度・第41回報知年間最優秀力士賞は22日、横綱・若乃花勝(27)=本名・花田勝、二子山=に決まった。東京・港区の東京プリンスホテルで開かれた選考委員会で、今年の優勝回数、勝率、相撲内容、土俵態度などを慎重に審議した結果、満場一致で決定した。若乃花は初の受賞。表彰式は来年1月10日、初場所(東京・両国国技館)初日の中入り取組前の土俵上で行われ、“黄金の表彰状”と賞金100万円、副賞としてキヤノンカメラが贈られる。
◆満場一致 ’98笑顔締め

 初受賞を若乃花はクリスマスプレゼントをもらった子供のような笑顔で喜んだ。「まさかもらえるとは思わなかった。11年間やってきたことが報われた気がする。来年の抱負?

 今年はいいことが重なっちゃったから、いい年は今年が最後かもしれない。だから来年は引き際かな。背水の陣で臨むよ」と冗談とも本気ともつかない決意を語った。

 今年の若乃花は終始、この軽いノリで苦難を乗り越えてきた。春、夏連覇で第66代横綱に昇進。67勝23敗で初の年間最多勝という実績だけでなく、庶民派的なキャラクターも評価された。

 力士のCM出演自粛に対して「おかしい。協会は間違ってるよ」と言い続け、2月に第一製薬と契約、解禁第1号になった。秋場所前に弟・貴乃花から絶縁宣言をたたきつけられたときも、じっと耐えながらも支度部屋では「ワイドショー見て楽しんでますよ」と報道陣を笑わせた。

 サービス精神おう盛で、今回の受賞写真も本紙読者へ感謝を込めてサンタクロースになろうとした。結局、「協会から怒られるだろうな」と自粛し、かわりに家族から似ていると言われるクマのプーさんにサンタの帽子をかぶせてツーショットだ。こんな最優秀力士は今までいなかった。

 軽妙なトークも評価され、年末はスケジュールがびっしり。クリスマスイブは雑誌の取材やラジオの収録などでつぶれる。深夜に帰宅し美恵子夫人と3人の子供の枕元にこっそりプレゼントを置くことになる。「横綱だけど威厳はなくてもいい。偉そうにするのが苦手だから」と型破りのイメージが強い横綱だが“強く優しい”という日本男児の伝統はしっかり守っている。(酒井隆之)

 ◆若乃花勝(わかのはな・まさる) 1971年1月20日、東京・中野区生まれ。27歳。二子山部屋。明大中野高を2年で中退し、88年2月に弟・貴乃花とともに父・二子山親方(元大関・初代貴ノ花)に弟子入り。同年春、初土俵。90年春、十両昇進。同年秋、新入幕。今年名古屋で第66代横綱に。優勝5回。181センチ、132キロ。得意は左四つ、寄り。家族は美恵子夫人(29)、長男・将希くん(3つ)、長女・瑞希ちゃん(2つ)、二女・麻美ちゃん(3か月)。

 ◆選考経過

 人なつっこい笑顔と親しみやすさで「横綱」をファンの手が届く距離まで近づけた若乃花に、選考委員も新しい横綱像を感じ取ったようだ。「従来の横綱とは違ったところで角界に貢献したのではないか」という池尻委員の言葉に、有馬委員も大きくうなずいた。

 67勝23敗という数字だけで若乃花の相撲界への貢献度を量ることはできない。記録ではなく、記憶に残る横綱として歩み始めたのだ。「若乃花は影で一生懸命けいこをしているんです」と安西委員。伏見委員も「ファンが”なってよかった”と思う横綱ですね」。

 体調不良で欠席した平山郁夫委員からも「若乃花を推したい」という伝言があり、初受賞が決定した。

 異例だったのは、九州場所で史上初の平幕での2回目の優勝を達成した琴錦を推す声があったことだ。「個人的には琴錦を推したい気もするのだが・・・。敢闘賞でも作ってあげたら」と有馬委員。一度は引退まで決意しながら復活Vを飾ったその相撲っぷりは、委員の心を動かすに十分だった。今年前半の不振がたたり受賞には至らなかったが、来年に期待したい。(直)

 ◇選考委員 平山郁夫氏(日本画家、東京芸大名誉教授)、有馬朗人氏(文部大臣、元東大総長)、安西邦夫氏(東京ガス社長、日本相撲協会運営審議会委員)、報知新聞社・伏見勝代表取締役社長、同・池尻潤冶東京本社編集局長

◆若乃花の成績

場所 成績
東大関 10勝5敗
東大関◎14勝1敗
東大関◎12勝3敗
名古屋 東横綱 10勝5敗
東横綱 12勝3敗
九州 西横綱  9勝6敗

※◎は優勝。

◆年間成績

順位 力士名 所属 成績 勝率
1 若乃花 二子山 67勝23敗 .744
2 武蔵丸 武蔵川 64勝26敗 .711
3 貴乃花 二子山 58勝20敗12休 .644
4 貴ノ浪 二子山 56勝34敗 .622
5 千代大海 九重 55勝35敗 .611

※休場は負けとして計算。

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