今年は2戦2勝。数字以上に大きな意味を持つ勝利だ。「一つは海外で、早いラウンドで、ボクシングの醍醐(だいご)味であるKO決着。もう一つは日本で、2万人の前で12回を戦い、技術や長いラウンドでの駆け引きなどを見てもらえた。ボクシングの全てをお見せできたと思う」
5月に英グラスゴーでのWBSS準決勝は、IBF王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)に2回TKO勝ち。主要4団体と、権威のある米老舗誌「リングマガジン」認定王者のベルト5本を並べた初の日本人となった。11月7日にさいたまスーパーアリーナで行われた決勝では、元世界5階級制覇ノニト・ドネア(フィリピン)と右眼窩(がんか)底骨折を負うほどの激しい打ち合いの末、判定勝ち。2万2000人の観衆を熱狂させた。
米興行会社大手トップランク社と契約し、リング誌のパウンド・フォー・パウンド(全階級通してのランク付け)で3位に浮上。「これまでひっくるめて、最高の年」と振り返った令和元年の締めくくりが報知プロスポーツ大賞受賞だ。「来年は海外で2戦。自分がどう変わるかも感じながら、今までに味わったことのない1年になると思う」。東京五輪に沸く20年。井上はさらなる飛躍の年にする。
◆井上 尚弥(いのうえ・なおや)1993年4月10日、神奈川・座間市生まれ。26歳。相模原青陵高でアマ7冠など通算75勝(48KO・RSC)6敗。2012年10月にプロデビュー。14年4月に6戦目でWBC世界ライトフライ級王座、同12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得。18年5月にWBA世界バンタム級王座を奪取し3階級制覇。今年5月にIBF王座獲得、11月にWBSSで優勝。プロ通算19戦全勝(16KO)。身長164.5センチの右ボクサーファイター。家族は妻と1男1女。