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表彰
ゴールデンスピリット賞
2019年ゴールデンスピリット賞
第21回受賞者(2019年) 西武・秋山翔吾
プロ野球人の社会貢献活動を表彰する報知新聞社制定「ゴールデンスピリット賞」の第21回受賞者が、西武・秋山翔吾外野手(31)に決定した。ひとり親家庭に育った自身の経験から、15年から埼玉、東京、神奈川、群馬のひとり親家庭の親子を、年間160人招待。球場に来て観戦してもらうことで、野球を通じて家族団らんを提供。試合前には招待者とサイン会や撮影会で交流し、ひとり親家庭の親子に笑顔を届けた。
首位打者、プロ野球記録のシーズン216安打…。数々のタイトルを獲得してきた秋山が、球場外でもMVPを獲得した。活動を始めて5年。受賞の報告を受け、笑顔で「評価していただいたのはありがたいし、うれしい。でも、賞を目指してやってるわけではない」。自らの信念から続けている活動であることを明かした。
きっかけは、当時同僚だった渡辺直人(現楽天)の存在だった。支援学校の生徒と交流を深め、試合に招待していた先輩の姿に共感。栗山巧らの活動も見ていたので、15年に球団から誘いを受けると、迷いなく活動を始めた。その年はフルイニング出場を果たし、NPB新記録の216安打を達成。日本代表にも選出されるなど、一流選手への一歩を踏み出した年だった。「名前を覚えられてきたシーズンだった。レギュラーとしてやっていく自覚を持たせてくれる、きっかけだった」
ひとり親の家庭に目を向けたのは自身が育った環境からだった。小6の時に、父・肇さんが他界。子供3人は、母・順子さんに女手ひとつで育てられた。「僕は中学ではもう野球を始めていたので、家族でどこかに行くという発想はなかった。でも(幼い時に)こういうきっかけがあったら、どこかで時間を作れたと思う」。仕事と家事を一身に担う順子さんと、遠方へ遊びに行ったりすることは、経済的にも時間的にも厳しかった。「直接話す団らんの時間も限られるので、その場所を提供できたらと思った。イベントを0から1にするのが、この球場招待の意義」と活動の意味を説明した。
5年間の活動で届いたファンレターは母親の元にある。仕事と家庭を両立させ、弟、妹とともに野球を続けさせてくれた母への感謝からだった。「お金もかかるし、環境的にも厳しかったので、心労はかなりあったと思う。でも、家族のつながりとして一番大きなものが野球だった。それでプロになることが目標になって、今いろんな人にこうやって返せているのは、母も喜んでいると思う」
ファンレターには感謝の気持ちがつづられている。招待試合がきっかけで野球を始めた子供たちもおり「野球人としてはうれしい」と笑った。その子供たちには「努力し続ければ、夢はかなう」と伝えてきた。自身は10月29日にメジャー挑戦を表明。同31日には侍ジャパンの強化試合で右足薬指を骨折、代表を辞退したが、前を向く。自らの行動で、夢と勇気を届ける。
「選手同士で声をかけながら、活動が広がっていけば。僕が何年も続けていれば、きっかけはできると思う」。今後は、球界での貢献活動の幅を広げていくつもりだ。そして「どこだからやるとかは関係ない。場所がどうこうは関係ない」と決意を示した。たとえ海を渡っても、野球を通じて社会に笑顔の輪を広げていく。(森下 知玲)
楽天・渡辺直人「僕自身、ひとり親家庭の親子や東日本大震災で移住された方、病弱支援学校の生徒さんなどを観戦に招待してきました。秋山には、彼が今みたいな一流選手になる前に、チームを背負って立つことの意味や、一流のプロ野球選手はどうあるべきかという話をいっぱいしてきました。その中で、慈善活動の話もしていたんだと思います。秋山がそういった活動に取り組んでいることはもちろん知っていますが、そのきっかけが僕だなんて言われたことはないです。彼の人間性が今回の受賞につながったと思っていますが、僕の教えを生かしてくれているのであれば、うれしいですね」
◆秋山 翔吾(あきやま・しょうご)1988年4月16日、神奈川県生まれ。31歳。横浜創学館、八戸大を経て2010年ドラフト3位で西武入団。15年にはプロ野球記録のシーズン216安打。首位打者1度、最多安打4度、ゴールデン・グラブ6度、ベストナイン3度。184センチ、85キロ。右投左打。今季年俸は2億3500万円(推定)。
◆選考経過 12球団からノミネートされた14人を対象とした選考委員会は今年も白熱した。「賞を制定した当時はお金の寄付という形が多かったが、今は活動の種類が多岐にわたるようになり、判断が難しくなっている」(佐山委員)、「自身が足を運んでいる、広がりがある、継続的である、という点に注目」(三屋委員)と、さまざまな角度から議論が交わされた。
活動の継続性や広がり、他にはないユニークな内容といった視点から候補が絞られた。乳がん検診の啓発運動で今回が9回目のノミネートとなる日本ハム・田中選手には「今年は現役引退という節目でもある」(大塚委員)と推す声が上がった。さらに、「自らもシングルマザーの家庭で育ち、苦労している」(斉藤委員)と、活動背景も注目された西武・秋山選手、「国際的な野球への関心も高まるはず。東京五輪を控える今のタイミングでこそ推薦したい」(長嶋委員)と、中南米諸国への用具提供に取り組むDeNA・筒香選手の3人が最終候補に残った。
最後は、5年連続5度目のノミネートと活動期間も長く、「子育て支援という、今の社会に必要な活動を担っている。自身の経験の上に立っているという点でアピール度も高い」(丸山委員)といった観点から、秋山選手の受賞が満場一致で決定した。
今の社会に必要な活動を担っている
◇選考委員(敬称略・五十音順) 大塚義治(日本赤十字社社長)、斉藤惇(プロ野球コミッショナー)、佐山和夫(ノンフィクション作家)、長嶋茂雄(読売巨人軍終身名誉監督)、丸山伸一(報知新聞社代表取締役社長)、三屋裕子(日本バスケットボール協会会長)。
◆ゴールデンスピリット賞 日本のプロ野球球団に所属する人の中から、積極的に社会貢献活動を続けている人を表彰する。毎年1回選考委員会(委員名別掲)を開いて、球団推薦と選考委員推薦で選ばれた候補者から1人を選定する。社会貢献活動の表彰は米大リーグの「ロベルト・クレメンテ賞」が有名で、球界での最高の賞として大リーガーの憧れの的になっている。日本では球場外の功績を評価する表彰制度は同賞が初めて。いわば「球場外のMVP」。受賞者にはゴールデントロフィー(東京芸術大学名誉教授・絹谷幸二氏作成のブロンズ像)と阿部雄二賞(100万円)が贈られる。また受賞者が指定する団体、施設などに報知新聞社が200万円を寄贈する。
◆阿部雄二賞 本賞を第1回から協賛している株式会社アイ・インベストメントの代表取締役社長・阿部雄二氏が2001年4月9日に逝去したことを受け、報知新聞社が「阿部雄二賞」を創設した。
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