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表彰
ゴールデンスピリット賞
2016年ゴールデンスピリット賞
第18回受賞者(2016年) 巨人・内海哲也
プロ野球人の社会貢献活動を表彰する報知新聞社制定「ゴールデンスピリット賞」の第18回受賞者が、巨人・内海哲也投手(34)に決定した。2009年1月に「内海哲也ランドセル基金」を設立。様々な事情で親元を離れて暮らす児童養護施設の児童に毎年、ランドセルを寄付している。オフには施設を訪問して子供たちと交流し、一昨年からは東北の東日本大震災被災地の児童養護施設の支援も開始。継続的、かつ広範な活動が高く評価された。
受賞の報を受けた内海は、真っ先に子供たちの無邪気な笑顔を思い浮かべた。
「素直にうれしいです。素晴らしい賞ですが、このためにやってきたわけじゃない。長男が生まれた年に始めたのですが、一人でも多くの子供が喜んでくれたら―と思ってやってきました」
ランドセル寄付の活動を始めて8年。全国の児童に計1087個を届けたことが評価され、文句なしの受賞となった。
きっかけは、球団行事で行った児童養護施設訪問だった。様々な事情で親元を離れて暮らす子供たちに、ランドセルを買う補助金が出ないと知って絶句した。「宮崎キャンプの時に行って、衝撃というか『こういう環境の子供がいるんだ』と初めて知った。野球で活躍することで何かできれば、と思いました」。09年1月にランドセル基金を設立。08年シーズンの奪三振数(154)に応じて寄付したのが、第一歩だった。
自身は小学校時代、ランドセルを背負ったことがない。全児童共通の学校指定の黄色いかばんで6年間、通学した。「ランドセルでなく、ナップザックみたいなやつだったので、(ランドセルの)黒い革にすごく憧れていた。今でもいいな、と思いますね。今は迷彩柄とか色々ある。うらやましいですね」。ピカピカのランドセルを一つでも多くの子供に届けたい。その思いを力に変え、実績を積み重ねてきた。
今シーズン、胸が熱くなる出来事があった。横浜でのDeNA戦の試合前。外野でランニング中、客席から「内海さーん」と声をかけられた。少年3人組だった。「パッと見たら『ランドセルありがとうございます。使わせてもらっています』と。すごく感動して、泣きそうになりました」。サプライズで伝えられた感謝の言葉。活動をしてきて良かった、と思えた瞬間だった。
13年からは「より多くのランドセルを届けたい」との意向から、奪三振数から投球回数分の個数に変更。関係団体を通して全国各地の施設に年間100個以上寄付してきた。毎年、シーズン後にその中から1つの施設を選んで訪問。「ランドセルを渡した時の子供の笑顔は『来年また頑張ろう』という活力になるし、元気をもらえる」。子供たちとゲームなどで交流することが、オフの楽しみになっている。
プロ野球選手の社会貢献活動への意識は年々、高まっている。内海はその輪をもっと広げたい、と考える一人だ。「僕は京都出身で近くの球場が西京極しかなかった。小学校の時に1回だけオリックス・西武戦に連れて行ってもらったけれど、衝撃でした。イチローさん(現マーリンズ)もいた。『テレビの中で見ていたプロの選手をこんなに近くで見られるのか』と感動した。自分がそういう立場になった今、子供と触れあう機会があれば、積極的に参加したい」。少年少女に夢を与えたい、という使命を感じている。
これまでに東京、福島、京都などの児童養護施設を訪問してきた。今後も全国的に足を運び、ランドセルを届けたいと考えている。「プロ球団のフランチャイズがない県に足を運びたい。これはずっと継続して、僕が引退するまで続けたいと思っています」。球場外のMVPを受賞し、慈善活動への思いがより一層、強くなった。(片岡 優帆)
◆内海 哲也(うつみ・てつや) 1982年4月29日、京都府生まれ。34歳。敦賀気比高から東京ガスを経て、2003年ドラフト自由獲得枠で巨人入団。07年に最多奪三振のタイトルを獲得し、11年18勝、12年15勝で2年連続最多勝。12年はベストナインも受賞。09、13年WBC日本代表。通算成績は297試合に登板。126勝89敗、1406奪三振、防御率3.09。186センチ、93キロ。左投左打。
◆選考経過 社会貢献活動に対する意識が年々高まっている中、今年はソフトバンクのサファテ、ロッテのスタンリッジら外国人選手もノミネートされるなど、その幅も広がってきた。だからこそ、継続性を評価すべきという声が各委員から上がった。
佐山和夫委員はノミネートが7年連続の内海、6年連続の巨人・村田修一、通算6度目の日本ハム・田中賢介に注目。平尾昌晃委員も同調し、「内海投手と村田選手はずっとノミネートされている。この2人のどちらかがいいと思う」と主張した。
長尾立子委員は「ご自身のお子様の出生時の状況から、新生児医療の支援活動に熱を入れてくださっている。非常に共感を呼ぶ」と、女性ならではの視点で村田を推薦。一方、佐山委員は内海が通算1087個のランドセルを贈呈してきたという実績を指し、「子どもたちの喜ぶ声や笑顔が浮かんでくる」と力説した。
村田か内海か。ここで、長嶋茂雄委員の文書が読み上げられた。内海が投球回が23回1/3にとどまった昨季、特別枠として100イニング分のランドセルを加算して贈呈した点を指摘。「アイデアのユニークさ、本人の志の強さを感じます」と最有力候補に推薦。これを受け、各委員の意見が内海の受賞で一致した。
熊崎勝彦委員が「甲乙つけがたい。ぜひ2人に賞を」と提案したように、村田に対する評価も非常に高かった。早川正委員は「DeNAの筒香選手のように、若く、新しい顔が出てくるのは非常にうれしいこと。何年か続けていけば、とてもいい選考対象になる」と話し、選考から漏れた選手たちが今後も活動を継続していくことを願った。
◇選考委員(敬称略・順不同) 熊崎勝彦(プロ野球コミッショナー)、長嶋茂雄(読売巨人軍終身名誉監督)、佐山和夫(ノンフィクション作家)、長尾立子(全国社会福祉協議会名誉会長)、平尾昌晃(歌手、作曲家)、早川正(報知新聞社代表取締役社長)
◆ゴールデンスピリット賞 日本のプロ野球球団に所属する人の中から、積極的に社会貢献活動を続けている人を表彰する。毎年1回選考委員会(委員名別掲)を開いて、球団推薦と選考委員推薦で選ばれた候補者から1人を選定する。欧米のスポーツ界では社会貢献活動が高く評価され、中でも米大リーグの「ロベルト・クレメンテ賞」が有名で、球界での最高の賞として大リーガーの憧れの的になっている。日本では試合での活躍を基準にした賞がほとんどで、球場外の功績を評価する表彰制度は初めて。いわば「球場外のMVP」。受賞者にはゴールデントロフィー(東京芸術大学名誉教授・絹谷幸二氏作製のブロンズ像)と阿部雄二賞(100万円)が贈られる。また受賞者が指定する団体、施設などに報知新聞社が200万円を寄贈する。
◆阿部雄二賞 2001年4月9日、本賞を第1回から協賛している株式会社サァラ麻布の代表取締役社長・阿部雄二氏が逝去。同氏の遺志として3000万円が報知新聞社に寄贈された。報知新聞社はその遺志を尊重し、長く後世に伝えるため「阿部雄二賞」を創設した。
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