第8回受賞者(2006年) ソフトバンク・和田毅

2006年11月25日6時0分  スポーツ報知

第8回受賞者(2006年) ソフトバンク・和田毅
 プロ野球人の社会貢献活動を表彰する報知新聞社制定「第8回ゴールデンスピリット賞」の表彰式が24日、東京・虎ノ門のホテルオークラで行われ、ソフトバンク・和田毅投手(25)が受賞した。同投手は、投球数に応じて発展途上国にワクチンを寄贈(2年間で約10万本)し、多くの子供たちの命を救った。表彰式で長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督(70)から激励された和田は胸を熱くし、来季は寄贈ワクチンの本数を投球数のほかに、リーグ優勝、日本一、各タイトル獲得で、各1万本ずつ増量する考えを明かした。副賞の200万円は、特定非営利活動法人「世界の子どもにワクチンを日本委員会」に寄贈された。
 緊張の面持ちでミスターの祝福の言葉に耳を傾けた。壇上で抱える黄金のトロフィーが重みを増した。「長嶋さんにこの場に来ていただき、祝福のお言葉をいただいたことは本当にうれしかった」1球投げるごとに、世界の子供たちの命を救ってきた和田の笑顔がはじけた。受賞の喜びは倍増し、さらにワクチン寄付活動に力を入れる決意を固めた。

 約350人の出席者に祝福されての「球場外のMVP」の獲得。「この賞に恥じないよう、野球人として、プロ野球、社会に貢献していきたい」受賞スピーチで表情を引き締めた左腕は、命の尊さを知っていた。いじめなどで若者の自殺者が後を絶たない中、マウンド上から生きるパワーを与え続けてきた。

 世界には、ポリオ、はしかなどの感染症のワクチンを受けられないために、1日当たり6000人の子供たちが命を落としている。厳しい現実を知った和田は、05年の開幕前に特定非営利活動法人「世界の子どもにワクチンを日本委員会」に連絡。公式戦の投球数に応じて、ワクチンを寄贈するプランを実行に移した。

 昨季は1球につき10本、勝利試合なら20本に本数を設定し、4万5770本のワクチンを届けた。今季はさらに、完投なら1球につき3倍の30本、完封なら40本に本数を増加。自己最多タイの14勝、自己ベストの防御率2・98をマークした入魂の2705球は、5万4810本のワクチンとなって、発展途上国に贈られることになった。

 2年間で10万580本の寄贈となるが、ミスターの激励を胸に、来季はさらに多くの子供たちを助けるつもりでいる。交流戦V、パ・リーグ優勝、日本一でそれぞれ1万本、また、最多勝、防御率、最高勝率、MVP、沢村賞など各タイトル獲得で1万本ずつのワクチンを追加寄贈することを決めた。「もしタイトルを総なめにして、日本一になったら10万本を超しますね」タカの左腕エースはサラリと言ってのけた。

 ひとりでも多くの子供たちに命を吹き込みたい。その純粋な気持ちは、4年ぶりの日本一奪回、プロ5年目の初タイトルに向けて大きなモチベーションとなっていく。

 ◆和田毅(わだ・つよし)1981年2月21日、愛知県江南市生まれ。25歳。小学1年で野球を始め、島根・出雲第三中から浜田高へ。98年夏の甲子園でベスト8。早大では東京六大学通算奪三振の新記録となる476奪三振をマーク。02年の自由獲得枠でダイエー(現ソフトバンク)に入団。03年に14勝を挙げ新人王を獲得。プロ通算成績は94試合50勝25敗、防御率3.44。178センチ、75キロ、左投左打。家族は妻と1女。

 ◆野球人としての誇り 表彰式では球界関係者が続々と集まり、日本プロ野球組織(NPB)の根来泰周コミッショナーが来賓あいさつ。和田の活動をたたえ、乾杯の発声を行った小池唯夫パ・リーグ会長も「和田君のこのような善行は野球人としての誇り」と祝辞を贈った。会場には元巨人のウォーリー与那嶺氏も米ハワイから駆けつけた。

 ◆ゴールデンスピリット賞 日本のプロ野球球団に所属する人の中から、積極的に社会貢献活動を続けている人を表彰する。毎年1回、選考委員会(委員名別掲)を開いて、自薦、他薦で選ばれた候補者の中から1人を選定する。欧米のスポーツ界では社会貢献活動が高く評価され、中でも米大リーグの「ロベルト・クレメンテ賞」が有名で、球界での最高の賞として大リーガーのあこがれの的になっている。日本では試合での活躍を基準にした賞がほとんどで、球場外の功績を評価する表彰制度は初めて。いわば「球場外のMVP」。受賞者にはゴールデントロフィー(東京芸大・絹谷幸二教授作製のブロンズ像)と阿部雄二賞(100万円)が贈られる。また、受賞者が指定する団体、施設などに報知新聞社が200万円を寄贈する。

 ◇選考委員(敬称略、順不同) 根来泰周(プロ野球コミッショナー)、豊蔵一(セ・リーグ会長)、小池唯夫(パ・リーグ会長)、長嶋茂雄(読売巨人軍終身名誉監督)、佐山和夫(作家)、伏見勝(報知新聞社前会長)、小松崎和夫(報知新聞社社長)

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