宇野昌磨ぶっちぎり!史上初1シーズン5度目の100点超SP開幕

◆平昌五輪第1日 フィギュアスケート団体(9日)
団体は男子ショートプログラム(SP)で宇野昌磨(20)=トヨタ自動車=が103・25点を出し、2位に約15点の大差をつけ1位。初五輪の重圧をものともせず、国際スケート連盟(ISU)公認大会で史上初となる1シーズン5度目の100点超えで、個人戦の金メダルへ弾みをつけた。ペアSPで須崎海羽、木原龍一組(木下グループ)が自己最高の57・42点で8位。日本は順位点の合計13点で3位発進した。
フィニッシュでふらつきながら、宇野はこらえた。五輪デビュー戦で、チームジャパンの先陣を堂々の1位で務めきった。「特に特別な感情はわき出てこなかった。全日本選手権の方が緊張した」という強心臓は健在だ。ミスがありながら、自己ベストに1・62点と迫る103・25点。史上初のシーズン5戦100点超えで、個人戦金メダルへ弾みをつけた。
元世界王者のパトリック・チャン(カナダ)、金メダル候補のネーサン・チェン(米国)、前の滑走者のミハイル・コリャダ(OAR=ロシアからの五輪選手)とミスの連鎖が続いた。「あんなに失敗するのは初めて見た」。やはり五輪の緊張感は特別なのか―。「自分も失敗するかも」。少しの弱気を抱いてリンクに立ち、冒頭の4回転フリップでバランスを崩した。「あ、ヤバい」。必死に耐え、なんとか着氷したところで吹っ切れた。チェンを圧倒した。
もう一つの難敵にも打ち勝った。フィギュア人気の高い北米のテレビ放送時間に合わせるため、競技は異例の10時開始。練習開始時間を早めるなど早朝対策を試してはみたが、体がふらついてやめたほど朝は苦手だ。この日は5時起き。2度寝、3度寝を繰り返しながら6時発のバスに乗った。「無理に何かをするのではなく、寝たかったら寝ようというくらいの気持ちだった」。ウォーミングアップをほとんどせずに、7時からの公式練習に臨んだ。
スケートに全てを費やしてきた。中学時代、練習でジャンプを跳べずに泣きながら帰宅することが何度もあった。「頑張れば頑張るほど、できなかった時の悔しさは大きい。嫌になりますよ。本当になります。すっごいなります。でも僕、3日で考えが変わるので」。すぐに負けん気の血が騒いだ。高校時代は文化祭、体育祭などの行事に参加しなかった。豊富な練習量が強さの源なだけに、丸一日滑らないことは難しい。「その分スケートを頑張れたし、犠牲にしていた感じではなかった」。そんな生活を苦に思ったことはない。
羽生パターン ソチ五輪では初出場の羽生結弦が団体戦のSP1位で流れをつかみ、個人戦金メダルへつなげた。「五輪という舞台を2度も経験できることはすごく重要な経験。どのような心境で、どのような体になっているのか確認して滑ろうと思った」。個人SPは16日。「もっと強い気持ちで臨みたい」。ずっと背中を追ってきた羽生と金メダルを争うための“予行演習”を、最高の形で済ませた。(高木 恵)