オカダVSオメガは、鶴田VS長州、猪木VSブロディを超えた…金曜8時のプロレスコラム

スポーツ報知
大阪城決戦の調印式で顔を合わせたオカダ・カズチカ(左)とケニー・オメガ

 9日に大阪城ホールで開催される新日本プロレス「DOMINION」で、IWGPヘビー級王者、オカダ・カズチカ(30)とケニー・オメガ(34)の決着戦が行われる。IWGP史上初となる時間無制限3本勝負という特別ルールというのも楽しみだが、何よりも昨年6月11日に同じ大阪城ホールで60分フルタイム(時間切れ)引き分けだった死闘の続きがいよいよ見られるのだ。

 昨年の大阪城決戦がフルタイムになった時、かつて同会場でフルタイムを戦ったジャンボ鶴田VS長州力(1985年11月4日)、アントニオ猪木VSブルーザー・ブロディ(1986年9月16日)と並んだと思った。だが、過去の2試合はフルタイムを最後に両者が再戦を行うことはなかった。すでに鶴田とブロディは鬼籍に入っており、“思い出マッチ”としてでも顔を合わせることはかなわない。

 だから再戦が決まった時点で、レジェンドたちを超えることになる。いや、オカダVSオメガは、昨年の時点で昭和の名勝負2番を超えていたと言っていい。昭和の2試合は高校時代に会場で見たが、試合終了時の雰囲気がオカダVSオメガとは決定的に違っていた。

 鶴田VS長州は、試合前に「本日のメインイベント60分1本勝負は特別ルールにより、両者リングアウトはございません」と“完全決着ルール”がアナウンスされ、大喝采となった。当時のプロレスは、“両リン”による不完全決着が横行していた。それが排除され、雌雄が決すると期待された試合だった。だが、40分を過ぎたあたりから、嫌な予感がした。長い足4の字固めなどで時間は進み、長州が珍しくジャーマンスープレックスを繰り出して沸いたが、鶴田がボストンクラブを決めた所でタイムアップとなった。ゴングが鳴った瞬間、ジャンボは両手でガッツポーズ。コーナーに上って「オー」までやる余力があった(それはそれですごい)。だから、「延長コール」の大合唱が巻き起こったのは当然だった。

 猪木VSブロディは、30分過ぎに、猪木のトップロープからのニーアタックがレフェリーのミスター高橋に誤爆して失神し、会場に寒い風が吹いた。大「コテツコール」を受けて山本小鉄がレフェリー代行としてリングイン。試合が続行されたことによって、ファンのがっかり感は薄まった。フルタイムで不完全燃焼も、反則で試合が終わることよりも受け入れやすかった。

 オカダVSオメガは、試合途中でオメガ陣営のCodyがリングにタオルを投げ込もうとして、場外に観衆の視線がいった時間はあったが、両者ノンストップの攻防が続いた。解説席の獣神サンダーライガーは「こいつら超人を超えてるで。スーパー超人だ」とうなり、残り時間1分からオメガが投げっぱなしドラゴンスープレックス、オカダが打点の高いドロップキックからレインメーカーとたたみかけた。大の字になったオメガにオカダがカバーにいこうとしたが、思うように体が動かずタイムアップ。死力を尽くした両雄に延長を望む声など出るはずもなかった。

 いつもなら「3つ言わせてください」と言うオカダのマイクアピールも座ったまま「1つだけ」とし、「ケニー・オメガ、最高のレスラー、超満員の大阪城ホール、最高の空間、勝つという最高の結果にはならなかったですけど、最高の60分でした」と声を絞り出した。オメガは「ユー・キャン・ビー・セカイノオカダ」とたたえた。

 そう言えば、あの猪木VSブロディの抗争では、新日本サイドが3本勝負を求めたがブロディと折り合いがつかなかった。過去の成績は、両者リングアウトか、反則による白黒(□■)はあったが、互いに1本も取らせることはなかった。3本勝負なら最終的にドローになったとしても、2本目までに〇●がつくことになり、そのリスクを取らなかったのだ。そんな昭和の因縁をも超越してしまう、オカダVSオメガの3本勝負が頼もしくてしょうがない。(酒井 隆之)

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