30年前の悪夢! ゴールデンタイムを終わらせた猪木VS海賊ガスパー…金曜8時のプロレスコラム

スポーツ報知
海賊亡霊ザ・ガスパー(右)にキックを見舞うアントニオ猪木(1996年12月1日、猪木フェスティバルin代々木第2体育館

 4月はテレビ番組の改編の季節だが、ちょうど30年前にプロレスファンにとっては、悲しい改編があった。テレビ朝日の新日本プロレス中継「ワールドプロレスリング」と日本テレビの「全日本プロレス中継」がそろってゴールデンタイムから姿を消したのだ。

 報知新聞の過去のテレビ欄をひもといてみると…。1988年3月21日(月曜日)の午後8時に「ワールドプロレスリング」のレギュラー中継がゴールデンタイムから撤退している。同じく3月26日(土曜日)には午後7時の「全日本プロレス中継」がゴールデン中継を終えている。

 内容を見てみると「ワールドプロレスリング」は「▽IWGPジュニアヘビー級選手権『馳×越中』▽猪木×海賊ビリー・ガスパーほか」、「全日本プロレス中継」は「『ブッチャー シン×馬場 輪島』『鶴田 テンタ×ブロディ ブバ』~古河市立体育館」という内容だ。

 両団体ともカードを見ただけで、末期的な状況だったことが思い出される。まず新日本だが、すでに黄金時代の金曜夜8時枠ではなくなっていた。テレビ朝日の前身、NET(日本教育テレビ)が、日本プロレス中継の代名詞だった金曜夜8時枠から日本テレビが撤退した1972年に継承していたが、86年10月に月曜夜8時に移行。ちなみに金曜夜8時の最終回は同年9月19日の生中継で、報知新聞のテレビ欄によると「『猪木×ドゥガン』『藤波×ブロディ』▽IWGPJ選手権『高田×越中』~福岡」となっている。

 この時は、まだ藤波とブロディの初対決という起爆剤があった。だがゴールデン最終回の「猪木×海賊ビリー・ガスパー」はファン離れの象徴的カードだった。謎の海賊亡霊は、87年3月26日の猪木VSマサ斎藤(3月26日、大阪城ホール)に乱入し、試合をぶち壊した。これが超過激で人気者だった古舘伊知郎アナウンサーの最終実況(4月の特番)になり、さらに忌まわしき短命番組「ギブUPまで待てない! ワールドプロレスリング」(火曜夜8時、半年で終了)へとつながる。

 ゴールデン最終回の猪木VSビリー・ガスパーは、セコンドのガリー・ガスパーが乱入し、猪木はガリーに延髄斬り。混乱したレフェリーのミスター高橋がガリーをフォールした猪木にカウント3をたたくという大茶番でフィナーレ。翌4月16日から土曜午後4時枠に移行した。

 一方の「全日本プロレス中継」は、長州力らジャパンプロレスとの対抗戦の人気で、85年10月から夜7時のゴールデンタイムに復帰していたが、87年にジャパンプロレスが解散。角界から元横綱・輪島と無敗のまま廃業した元幕下・琴天山ことジョン・テンタを獲得したものの、数字(視聴率)の取れるスターにはなれなかった。88年は東京ドーム元年で、プロ野球・巨人のホームゲームが雨で中止になる心配がなくなったことも、4月の日本テレビのスポーツ中継改編に影響したことだろう。

 新しい発見としては、金曜夜8時の最終回とゴールデンタイムの最終回の双方に出演していたのが、ブルーザー・ブロディだった。くしくもブロディはゴールデンタイム撤退直後の88年7月に亡くなっている。プロレスのゴールデンタイム待望論は根強くあるようだが、今はプロ野球と同じく、CS放送で完全中継というのが定着している。ゴールデンタイムでは、「プロレス総選挙」や「アメトーーク!」(ともにテレビ朝日)での、プロレス紹介バラエティーに期待したい。(酒井 隆之)

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