【センバツ】智弁和歌山・黒川、親子2代延長サヨナラ打

スポーツ報知
10回2死一、二塁、黒川〈10〉のサヨナラ打に喜ぶ智弁和歌山ナイン(カメラ・小梶 亮一)

◆第90回センバツ高校野球大会第10日 ▽準々決勝 智弁和歌山11x─10創成館=延長10回=(1日・甲子園)

 智弁和歌山が驚異的な粘りで壮絶な打撃戦を制し、18年ぶりの4強入りを決めた。9回2死から2点差を追いつき、1点を勝ち越された10回裏も2死から黒川史陽(ふみや)二塁手(2年)が逆転サヨナラ2点二塁打を放ち、創成館(長崎)を下した。2日は休養日で、準決勝は3日に行われる。

 両軍計30安打の壮絶な打撃戦。決着をつける逆転サヨナラ二塁打に、日曜の甲子園が沸き返った。智弁和歌山が9―10で迎えた10回裏2死一、二塁。1ボール2ストライクと追い込まれた黒川が、浮いたチェンジアップを振り抜いた。打球は左翼手の頭上を越える。2者が生還だ。2、3回戦では7打数無安打とスランプだった2年生はこの日、2回にも左翼ソロと大活躍。「自分が決める自信があった。それだけの練習をやってきた。野球の神様が打たせてくれた」と長い時で2、3時間も行う素振りが報われ、まくし立てた。

 5点ビハインドからの逆転勝ち。甲子園春夏通算の最多勝利数を67と伸ばした高嶋仁監督(71)は「黒川はここ2、3日で調子が上がってきた。何年か前に8点取られて逆転したのを思い出した」と06年夏の準々決勝・帝京(東東京)戦で9回表に8失点し、8―12となったその裏、5得点してサヨナラ勝ちした激戦を思わず回顧した。長崎生まれの名将は「長崎出身者が長崎のチームに負けられん」と上機嫌だ。これで智弁和歌山は春夏通じて最多となる延長戦11勝目。聖地での勝負強さを見せた。

 黒川の父は上宮(大阪)で93年春優勝時に主将だった洋行さん(42)。「1番・二塁」だった父は、同大会2回戦の横浜戦で、くしくも息子と同じ延長10回に同じ左翼へサヨナラ打を放っている。「父が打てたのなら、僕にも打てる。優勝して『追いついたぞ』と言いたい」と負けん気の強さをのぞかせ、「打ち合いなら負けない。何点取られても諦めないのが伝統」と笑った。OBで元巨人捕手の中谷仁コーチ(38)も「(洋行さんの)DNAをもっている。黒川は練習の取り組み方、量、姿勢は今年のチームNO1」とたたえた。

 18年ぶりに春4強を決めたチームを準決勝で待ちかまえるのは、東海大相模。18年前の00年春、決勝で敗れた因縁の相手だ。「次は神様に頼らず、自分の力で打つ」と黒川。劇的勝利の勢いは、まだまだ続きそうだ。(田村 龍一)

 ◆黒川 史陽(くろかわ・ふみや)2001年4月17日、奈良県河合町生まれ。16歳。中学時代は「泉州阪堺ボーイズ」(旧高石ボーイズ)で主に三塁手と外野手、3年時に全国大会出場。智弁和歌山では1年春からベンチ入り。180センチ、80キロ。右投左打。ボクシングの元世界王者・高山勝成(34)はトレーニング仲間。家族は両親と兄、弟。兄の大雅さんも日南学園(宮崎)で16年春夏の甲子園に出場。

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